中東の混乱が続く中で選択の幅は大きくしておくべきだ

――昭和シェルの大株主からロイヤルダッチシェルが抜けても第2位の株主、サウジアラムコが残る。ここに大きな危機感をもっているとも聞いていますが。

【浜田】今、サウジアラビアで何が起きているか。サウジとイランの対立で中東の行方が見えなくなっている。サウジアラビアでは、今若い皇太子が積極的な経済政策に出ているわけです。あふれるぐらいのオイルマネーをばらまいて国民を納得させてきた国ですから、原油が下落していて十分な収益があがらない。それじゃ国家そのものがやっていけないというところまできているわけです。それで国営サウジアラムコ社を市場公開して、200兆円ぐらいの資金を調達して、海外投資戦略を強化するという経済政策の大転換を図りつつあるわけですよ。彼らは脱オイルなんていっていますが、そんなことは簡単にはできない。彼らは上流産業ですから、下流分野をしっかり固めてくる。ロイヤルダッチシェルが撤退したら昭和シェル石油の筆頭株主はサウジアラムコになるわけです。関(大輔・出光興産副社長)さんたちはサウジアラムコも撤退することも有り得るという楽観的な見方をしていますが、私どもはそうではないと思っているんです。韓国のSオイルという会社は当初はサウジアラムコが30%程度の株式を所有していたのですが、ここ数年で100%株主になっています。Sオイルのタンカーは今では、サウジとしか往復していないのです。我が国のエネルギーの安全保障という観点からも、出光のような民族資本の会社が独自で頑張るということは、貴重だと思います。

――出光興産と昔から関係の深いといわれているイランとは今後どうなりますか。

【浜田】関さんたちの説明は、「イランの石油は重油が中心であって今の出光の精製所はイランの重油は合わないので、輸入量は1%程度まで落ちていますから影響ないですよ」といいます。しかしイランは重油だけでなくて軽油だってあるのですよ。こちらの受け入れ態勢が変われば増やすことだってできるわけですよ。関さんたちは、「昭和シェルの方は今でもイランから輸入している。つまりサウジアラムコもイランから相当輸入しているじゃないですか」といっています。しかし、ロイヤルダッチシェルがこれまで筆頭株主(35%)であったわけで、撤退した後は情況が変わってくるでしょう。それに何もイランからだけ輸入せよと言っているわけではなく、中東の混乱が続く中で選択の幅は大きくしておくべきだと言っているんです。サウジアラムコがどう変わるかわからないのに合併を決めてしまって本当にいいんでしょうか。ところが彼らはインサイダーを盾にして「昭和シェルの株を買おうとしているので、今サウジアラムコと話をするわけにはいかないのです」というわけですよ。このような中で「サウジアラムコが撤退するよ」なんて気楽な言い方は通用しないと思います。いずれにせよ、経営の問題にしても中東の情勢にしても、原油の調達は多様化しようという元売りの基本戦略があるわけですから、イラン、サウジアラビア、さらにはロシアなど幅広く考えなければならないのです。