多様化、高度化するサーバー攻撃
Windows 7や8に愛着があれば、長年使い続けたいと思うのは当然です。いくらセキュリティの事情があるからといって、好きなものは好き。どうしてWindows 7のまま、セキュリティだけを改善していってくれないのか──。こういった声も当然あるでしょう。
しかし、近年のサイバー攻撃は、そんな「もったいない」の心などお構いなし。攻撃手法は極めて多様化し、特定のサイトをブラウザーで見ていただけでウイルスを埋め込まれたり、それこそ2015年に大騒動となった日本年金機構への標的型攻撃のように、あらゆる手が尽くされています。攻撃の手法が進化する以上、それに合わせてOSの根本のセキュリティ構造を見直していくのはある意味必然です。
もちろん、マイクロソフト側の経済的な事情もあるでしょう。いくら世界的大企業とはいえ、開発者の数は限られています。過去のOSに1件1件修正パッチを当て続けていくには限界があり、時にはOSを丸ごと刷新したほうが効率的です。
例えば車で考えてみるとどうでしょうか。1970年代に発売された名車は、現代にないデザイン感覚で設計され、愛好家を魅了します。しかし、排ガス規制基準は現在に全くそぐわず、エアバッグのような安全装備もありません。ユーザーが努力して、コストをかければ安全性は上がるでしょうが、車への深い理解が欠かせません。
浅田さんは、こう指摘します。「(アンティークの)家具ともまた違って、ITやセキュリティはどうしても陳腐化が速く、IT投資に積極的な海外とどう競っていくかは国内企業にとっても大きな課題です。最近では、過去の試算がない分、新興国のIT投資も非常に積極的な中で、日本企業が旧来型の業務システムを大事に使い続けるには限界があるかと思います。企業トップの経営判断もまた、重要ではないでしょうか」