この手の悩みを持つ相談者に「何の対策も立てずに、今後どうするつもりだったんですか?」と聞くと、大抵は「みんなが何とかなっているから、うちも大丈夫だと思った」と答えます。彼らは、苦しいであろう家計の現実を見るのが嫌で、見て見ぬふりをしてきたのです。その気持ちはわからなくもありませんが、楽観視していてある日突然家計が破綻してしまっては、元も子もありません。

また、家計が破綻してしまう家庭は「夫婦が協力して家計を管理していない」ケースがほとんどです。特に、40代、50代より上の世代になると、専業主婦の妻が1人で家計を管理しているケースが圧倒的に多く、夫は稼ぐだけで家計には無関心。夫婦双方に「責任者」という意識がなく、漫然と過ごしていると、早晩にっちもさっちもいかない状態がやってきます。しかし、早めに経営計画を立てれば、金策の手段はいくらでも見つかるのです。

ライフプランシートで今後20年を丸裸に

家計を破綻させないためにも、家庭ではフィロソフィのもととなる「人生計画」を立てましょう。図のような「ライフプランシート」を作り、今後家族に待ち受けるイベントや、それぞれの夢を書き込んでいくのです。期間は20年、30年と長期的であるほどいいのですが、ひとまずは夫の定年を目安にしてください。

サラリーマンであれば、大体の年収は予想できるもの。年収や貯蓄の予定金額も書き加えていくと、さらに詳細なライフプランシートになり、今後の資金繰りを考えるのにも役立つ。

埋め方のコツは、すでに決まっているライフイベントから書き込んでいくことです。まず最初に、家族の名前と年齢を書き、子どもがいれば、中学・高校・大学の入学の年と受験の年を書き込みます。次に、車検やマンションの更新料、修繕費、車の買い替えなど、すでに決まっている支出に関するイベントを書き込み、さらに家のリフォームや家の購入、留学、結婚、海外旅行……といった「夢」を書き込みます。

最後は、ライフイベントをこなすのに必要な「支出(かかる費用)」の部分を埋めていく作業です。車検にはいくらお金がかかるのか、長女の中学は私立にするのか、公立か。長男の大学は……と、金額と関連付けて調べていくと、今の段階で「できること」と「できないこと」がはっきりします。

そこで何を優先して、何を諦めるのか。「フィロソフィ」のある家庭なら、「教育費が最優先だから、海外旅行はしばらく我慢しよう」「何が何でも家を持ちたいから……」と、すぐに取捨選択し、ムリのない人生設計が立てられます。また、家族のベクトルが夢に向かって一致しているので、多少我慢しなくてはならないことがあっても、不満は出にくいようです。

ファイナンシャル・プランナー 藤川 太
相談実績1万5000件超。「家計の見直し相談センター」相談員。
(大高志帆=編集・構成)
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