「ほんとうはやりたいこと」にエリートが挑戦!
鯖江に残ったメンバーたちは東大などを卒業した極めて高学歴の若者や、起業経験があったり、プロスポーツをしていたりと、とにかく経験豊富な人たちです。そんな彼らが田舎のまちで取り組んでいるのは、人間が『生きる』ということを前向きに模索したり、それに必要な仕事や生業も含めて暮らしを豊かに面白くしていったりという挑戦なんだと思います。人間として生きる暮らし、僕は「人間生活」と呼んでいます。
彼らが目指しているのは、そんな人間生活の質を、可能性を拡大しながらアップデートしていくことなんだろうと思います。そのためには、目先の収入の確保よりも、地方のまちでしか模索できない新しい生活の可能性を、貪欲に追求していくことの方が大切です。その中で必要な仕事があればしっかりと働き、お金がついてくるように工夫する、というスタンスを彼らに感じます。
東大卒のメンバーは、鯖江のまちで塾を始めました。手っ取り早く稼ぎたいのなら、進学希望者に受験対策を教えるのが一番でしょう。共働きが多い福井の家庭で、高い月謝を払ってでも子どもにいい先生をつけたい親はたくさんいます。
ところが、彼が始めたのは進学塾ではありませんでした。おそらく、塾や予備校の経営者などがよく言うような、「ほんとうは、受験に関係なくこういうことを若者に学んでほしい」というようなことを、真正面からやろうとしているのだと思います。つまり、「学び方」や「考え方」のトレーニングなど、受験に限らず学校や職場で役立つようなプログラムを、あらゆる世代に提供しようとしています。
このようなプログラムはなかなかお金にはなりにくいかもしれませんが、少なくとも本人がものすごく楽しそうに、夢中になって取り組んでいるのを感じます。それはつまり、収入の確保よりも、「ほんとうはやりたいこと」や人生の可能性に挑戦することで、日々の充実感や意義を見出しているというとなんだと思います。