「仕事より家庭に全力投球」と決めた女性の胸の内

▼分岐点3【人生観、仕事観など女性の心境の変化があるか否か】

企業にとっては、能力を発揮し活躍してもらうための高学歴女性は貴重な人的資源ですが、高学歴だからといって、全ての女性が仕事と家庭の両立を志向するわけではありません。

アンケート調査結果のなかでも、正規雇用を離職した女性の理由として、最も多いのは……。

●「できることなら子育てをしながら仕事を続けたいと思っていたが、実際に子育てと仕事の両立が難しいと思ったから退職した」……35.0%
●「子育てに専念したいと思ったから出産を機に退職した」……31.9%

なお、筆者が行ったヒアリングのなかでは、

●「子育てや家事の方が仕事より面白くなり離職した」
●「仕事と家庭のどちらかに全力投球したいと思って比べた結果、家庭を選んで離職をした」
●「夫の仕事を優先しつつ、自分の道は別に探せばよいと考えて離職をした」

など、当初はキャリア志向だった女性も心境の変化で離職をしているケースがありました。ライフイイベントの影響によって女性自身の心境が変化することが、両立の分岐点の3つ目といえます。

親の介護しつつ、産休・育休の後輩の穴埋めする「両立派」の苦悩

▼「両立する女性」が抱える2つの大きな葛藤

ヒアリングを進めていくなかで、仕事と家庭を両立している高学歴女性が、様々な悩みを抱えて働いていることにも改めて気づかされました。最後に、代表的な2つケースを紹介したいと思います。

(1)両立する女性が抱える気持ちの葛藤

仕事と家庭を両立できている高学歴女性というと、「きっと昇進がしたい女性だろう」「家事への関心が低い女性にちがいない」といったやや偏った意見を持つ人もいます。しかし、実際は両立派の女性も葛藤しています。例えば……。

●「企業側の昇進路線一辺倒の評価体系で働くことに嫌気が差している」
●「子育てのために働ける部署や仕事内容が限定的となり満足感を得られない」
●「家事メン夫と結婚したものの夫の家事のレベルが高すぎるため、分担をしていても居心地の悪さを感じる」

そんな意見を持つ女性もいました。仕事と家庭を両立しているからといって必ずしも満足しているわけではなく、両立しながら働いているからこそ抱く悩みがあることがうかがえます。

(2)介護に直面したとき心が折れそうになる

今回は仕事と家庭の両立というテーマで、主に子育てを中心に紹介をしました。

しかし、ヒアリングのなかで介護問題が身近な問題になりつつあることも感じました。両親が続けて病気になる、仕事中に家族が突然病気で倒れて呼び出されるなど、育児と異なって介護は、「突然かつ予想外の出来事」として訪れたと聞きました。介護問題に直面しながらも離職をせずに、働き続ける女性の精神的負担は非常に重いものだと感じます。

なかには、職場で多くの若い女性達が会社の制度を活用して、産休や育休、短時間勤務を取得しているのを横目に、親の介護の問題を抱えながらも、人手のやりくりで疲弊する現場で長時間労働をしながら先輩社員として支えているというケースもありました。

働く人同士が、子育て以外にも何か家庭の事情を抱えているかもしれない、という思いやりの気持ちを一人ひとりが持ちながら働くことは、大事なことだと感じます。

働く女性の仕事と家庭の両立を実現することは企業や社会の共通認識になりつつありますが、多くの課題が残っています。現時点では、両立を実現させている女性も、様々な悩みを抱えながら働いています。

働く意欲の高い人が働き続けられる環境づくりを企業や社会が行っていくと共に、働く人同士がお互いに多様な価値観を認め、個人が抱える多様な事情に配慮し、働きやすい環境づくりに向けた努力をしていくことが必要だと考えます。

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