「デビューから3作目までは、まず原稿用紙にペンで書いて、それをパソコンのワープロソフトで打ち直していました。ところが僕はけっこう字が汚いので、それを見てパソコンで打つ作業は、目にかなりの負担がかかります。では、最初からパソコンで書けばいいじゃないかとなるわけですが、パソコンの画面だと、ちょっと明るすぎて目がひどく疲れるんです。小説を書くときは、次の行はどうしようかって悩んでいる時間が圧倒的に長く、自分が書いた文字をずっと見つめ続けるものですから」
そこで取り入れたのがポメラというわけだ。ただし、現行機種のDM100では、画面表示にバックライトが搭載されてしまった。もちろん、世間ではこれで見やすくなったと評価する声も多いのだが、羽田さんはやや不満げだ。
「僕にはあまり必要ないですね。バックライト・オフの設定がほしいくらいです。ふだん使うときは、一番弱く設定しています」
DM100に備わっている縦書き表示にもさほど関心を示さない。
「当初、DM20を使いはじめの頃は、原稿用紙で縦書きの習慣がついていたので、横書きに戸惑いもありました。小説家は、ふだんから小説を縦書きで書いたり読んだりしている分、横書きにすると作風に変な影響が出やしまいかと思ったわけです。でも、そんなこともなかった。ですから、今でも横書きで使っています」
双方向通信が当たり前の時代にあって、ポメラは一方通行型のデジタルツールと見る向きもある。つまり、ポメラで入力した文字データをパソコンへ持っていって活用するのには向いているが、さらにパソコンからポメラに戻してデータを編集するといった使い方は、ややもするとイライラを招く原因となるのだ。羽田さんはその点、ポメラからパソコンへという一方通行に徹している。
「どうせ紙に印刷するんですよ。つまり、ポメラで書いたちょっとしたネタや小説の本編を、パソコンにつないで一太郎(ワープロソフト)に貼りつけ、それをプリントアウトする。入力した画面ではない、別の画面や紙でもう一度客観的に見るという癖、それを維持するには、このスタイルも悪くない気がします」
ポメラで入力したテキストは、その日のうちにパソコンへ取り込むというのも羽田さん流。