「海賊船」には100万人、「光の王国」は世界一に

澤田が社長に就任してから3カ月後の2010年7月には、人気コミック『ワンピース』のアトラクションを誘致。さらに11年4月には作品に登場する海賊船「サウザンド・サニー号」を再現して話題を集めた。この船は本物で、航海も可能。3年間で100万人以上が乗船する人気アトラクションとなった。現在はハウステンボスから、姉妹施設である愛知県蒲郡市のラグーナテンボスに“出航中”である。
(上)人気を集めた『ワンピース』の海賊船。(下)雨が多い長崎ならではの「アンブレラストリート」。(C)尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション

【弘兼】ハウステンボスの復活を知ったのは、10年の冬に見た「日本一のイルミネーションを開催中」というニュースでした。これは行ってみなくちゃいけないな、と思いました。

【澤田】テーマパークにとって冬の集客は課題のひとつです。気温は低く、日も短い。寒くて、暗いわけです。だったら、暖かくて、明るいイベントをやれないか、と考えました。そこで探してみると、フランス・リヨンでは12月に「光の祭典」というイベントがある。4日間にわたり街全体がライトアップされ、世界中から400万人もの観光客が訪れるんです。これだと思いました。

【弘兼】まさに逆転の発想ですね。

【澤田】日本一の700万球から始めて、去年は1100万球超で世界一のイルミネーションになりました。普通は春休みの3月と夏休みの8月が入場者数のピークですが、いまでは12月の入場者数が最も多い。我々は「光の王国」と呼んでいます。

【弘兼】いまの時期は園内の至る所で花が咲いていますね。とりわけ、さきほどご案内いただいたバラ園は素晴らしい。これも日本一ですね。

【澤田】1500品種で、「111万本のバラ祭」と銘打っています。

【弘兼】しかし、このバラ園をアウトレットモールにする計画があったと聞きました。本当ですか?

【澤田】本当です。バラ園はあったのですが、ほとんどお客さんがいなかった。それなのに年間に何億円も経費がかかる。「バラ園を潰して、日本一のアウトレットモールにしよう」と言っていました。

【弘兼】なぜ心変わりを?

【澤田】春になって、一斉にバラが咲き出すと、すごく見応えがある。これを潰すのはもったいない。それまで「ボタニカル・ガーデン」という名前だったんです。私は「そんなぼた餅みたいな名前はダメだ」と名前を変えさせました。それが「100万本のバラ祭」です。今年はさらに増えて111万本になりました。

【弘兼】「日本一のバラの街」というキャッチコピーもわかりやすいですね。園内のホテルにもバラが飾られていて、ロビーはバラの香りに包まれていました。季節感がありますね。

【澤田】ハウステンボスは「花の王国」も名乗っています。3月はチューリップ、4月は桜、5月はバラ、6月はアジサイ、7月はユリと常に花が咲いているように工夫しています。