北朝鮮が核兵器を手放すことはまず考えられない
すると今、一番気になるのは、北朝鮮の核兵器とミサイルの存在だ。
北朝鮮の核開発は、03年に米朝関係が悪化し、米軍がイラクに侵攻した頃から加速し始めた。イラク戦争の帰結を目の当たりにし、米国が本気で侵攻してくる可能性を考えたことが、北朝鮮が核兵器開発に固執する要因の1つだと推測できる。
06年には核実験に成功したことが判明。その前後から、北朝鮮は核を手放すことを匂わす発言はほとんどしなくなった。平和協定締結についても、核開発の放棄とリンクさせることは拒否し、「平和協定の締結が先、核の問題はその後」と主張している。平和協定などなくとも、核兵器がある限り、米韓側からは攻めてくるまいと考えている節がある。
現在の北朝鮮にとって、核兵器とミサイルは自国の安全保障上、不可欠のものである。今年1月の水爆実験後、韓国との南北共同の工業団地「開城工業地区」が封鎖されたが、いかに厳しい経済制裁を科されても、北朝鮮がこれらを手放すことは、まず考えられない。国民の負担がいかに増えようとも、国家が消滅するよりはましであるからだ。
しかも北朝鮮には、アジアで最も良質といわれるウラン鉱脈が存在する。核開発に費用はかかるが、今では外貨はそれほど必要としないだろう。核実験はおよそ3年おきに行われている。予算の制約のためとみられるが、北朝鮮の経済は現在、発展しつつある。今後は財政がより豊かになって、核実験の頻度も増える可能性がある。
韓国と同様、北朝鮮もまた朝鮮半島全域を自国の領土と規定している。北朝鮮側から見れば、韓国政府こそ消滅させるべきインサージェンシーである。韓国も北朝鮮も互いに相手を国家として認めず、「いずれ叩き潰すべき獅子身中の虫」と捉えている。隣国どうしが対立し合う単純なイメージとは大きく異なる。
互いに相手を滅すべき存在と見なす両国の間には、常に戦争の危険性がある。南北どちらも「平和的統一」を唱えてはいるが、武力統一の可能性も排除していない。双方の違いは、「外国を交えず民族間で統一するのが正しい道筋」と主張する北朝鮮に対し、韓国側はできうる限り米国を巻き込もうとしていることだ。