“北の核”は日米に大きな被害をもたらす水準に

韓国と北朝鮮が開戦した場合、在韓米軍基地があるため、米国も戦争に巻き込まれる可能性が高い。日本政府も支援を求められることになるかもしれない。この状況を北朝鮮側から見れば、日本も米国も韓国政府という傀儡政権を後押しする敵国である。そこで核兵器とミサイルの存在が問題になる。

16年1月の核実験が水爆によるものだったか否かについては疑問もあるが、否定する証拠もない。北朝鮮が「水爆」と主張するのは、どちらかといえば自国民向けのプロパガンダと考えられるが、日米にとっては、仮にそれが原爆であったとしても、脅威であることに変わりはない。

核兵器は威力が大きいため、精密に目標に誘導しなくとも、敵国の上空で爆発させるだけで、熱、風、放射線、電磁パルスによって、周辺に壊滅的な破壊をもたらす。ロケットで衛星を軌道に乗せる技術を持つ以上、北朝鮮の核兵器はすでに、日米に大きな被害をもたらす水準に達していると見なければならない。

仮にミサイルに搭載した核爆弾が、40キロ以上の上空で爆発しても、周辺の電子機器は一切使用不能になり、付近を飛行中の航空機は全滅するともいわれる。地上でも信号機が動かなくなるなど大きな混乱が起きるだろう。これを高高度電磁パルス攻撃という。

もちろん核兵器は最終兵器であって、北朝鮮もそう簡単には使わないだろう。仮に米国に対して核兵器を使えば、核による報復を覚悟しなければならない。しかし国家として滅亡寸前に追い込まれれば、使う可能性はある。そうなると米国といえど、うかつには北朝鮮を攻撃できない。これが核兵器の抑止力である。

仮に米国が「自国を核攻撃される恐れがあるから、北朝鮮との戦争には介入できない」と考えたら、日米同盟は機能しなくなる。

そうした事態を防ぐためには、日本が北朝鮮のミサイルを迎撃する能力を備えたうえで、「北朝鮮から米国に向けたミサイルが発射されたら、日本政府は必ずその迎撃を命ずるだろう」と信じてもらうことが必要だ。日本にとっては、米国からの信頼を確保し、日米同盟を確実に履行してもらうことが、自国の安全保障上、死活的な問題となる。

幸い、安倍政権による一連の安保関連法案の改正により、米国政府における日本の信頼度は高まっている。これらの改正は、対中国を考えても、中東のエネルギー安全保障を考えても、必須のものであった。むしろ、ここまで改正が遅れたことが問題だと私は考えている。

(構成=久保田正志 写真=共同通信社 図版作成=大橋昭一)
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