資金稼ぎの目的ででクラブを開店
沖縄ではウコン栽培が盛んで、レキオファーマとしてもその色素成分のクルクミンの研究を続けてきた。クルクミンは抗炎症作用が強く、アルツハイマー病の原因物質の1つと推測されるアミロイドβの脳内への蓄積を防ぐ効果も証明されている。
課題はクルクミンの体内への吸収率が低いことだったが、レキオファーマでは深海鮫の肝油に含まれる「スクワレン」と配合して効率よく吸収させる方法を開発し、特許を取得した。
また、トウゲシバに含まれるヒューペルジンAでは、岐阜薬科大学や医師との共同研究によって、マウスの記憶改善効果を確認。認知症の症状改善に役立つサプリメントとして開発している。すでに、ヒューペルジンAのカプセルタイプと粉末タイプを発売している。
医薬品やサプリメントの開発ベンチャーとしてレキオファーマを育て上げた奥だが、もともと医薬品の知識もなければ、経験もなかった。
1946年に沖縄糸満市で生まれた奥は、小学校3年の時に父を事故で亡くし、中学2年の時に母を病気で亡くした。妹たちと一緒におばに引き取られ、不自由なく暮らしたが、両親のいない寂しさは奥の自立心を養った。
琉球大学農家政工学部(当時)に入学後、中国語クラブに入り、中国語を習った。
大学2年の時に台湾へ語学留学した。当時の台湾はいまほど工業化されていなかったが、農業が進んでおり、自給自足できる経済が成り立っていた。
「それに比べて沖縄の農業はサトウキビくらいしかない。台湾のように農業を育て、緑豊かな島にしなければと思いました」
大学を卒業後、その意志を実現するために、東南アジアから果物や植物の苗木を輸入する貿易会社をひとりで立ち上げた。ヤシの木を輸入し、沿道の街路樹として普及させた。だが、本格的に事業を広げるにはもっと資金が必要だった。
そんなとき、たまたま入ったスナックで3000円のウイスキーを4倍の値で売っているのを見て驚いた。
「こんな利益率の高い商売なら、資金を稼げるのではないかと思ったんです。1年ほどやって、ある程度資金が貯まったら、やめようと始めたのですが、友人たちは水商売に手を出すことにみな反対だし、育ててくれたおばも泣いて私を止めました」
しかし、奥の決意は固かった。80年に那覇市の繁華街にクラブを開店。店名を「舜(シュン)」とした。中国で理想の君主、聖人と崇められた「舜帝」から名付けた。