オリンピック×運動会で、「オリンピッ会」

【為末】あと、僕が言うと怒られるけど(笑)陸上競技でいえば競歩は……。

【みうら】変ですね(笑)

【為末】なんで歩くようになっちゃったかな、っていう。

【みうら】あれは走るのも速かった人が、「君は歩いても速いんじゃないか」って勧められる競技なんですか?

『ない仕事の作り方』(文藝春秋刊)

【為末】競歩はハードルに似ているところがあるんですよ。マラソンはケニアとかアフリカ勢がすごく強いんですけど、競歩になると脚のバネが使えないから心肺機能と練習がものを言う世界になります。そうなると比較的日本人や中国人が勝負しやすくなるんです。でも、この競技ができたそもそもの理由が何だったのかはわからないですね。

【みうら】学校でチビりそうになってるような状況ですよね。廊下を走ってはいけないんだけども、なんとか速くトイレに行きたいっていう……。

【為末】決してそういう競技ではないんですけど(笑)日本では競歩はオリンピック代表も東大や京大出身のインテリ選手が多いので、おそらくどこかでハッと気づくんじゃないですかね。「みんなマラソンやってるから、競歩なら勝てるんじゃないか?」って。

【みうら】みんな「これならいける」っていう競技を選ぶんですか、やっぱり(笑)

【為末】そうですね。僕らの場合、「ない競技を作る」というのは、なかなか難しいので。

【みうら】障害物競走には「網くぐり」とか「パン食い」とかあるじゃないですか。ハードル競技にあれを加えてはいけないんですよね?

【為末】どうなんだろう。

【みうら】借り物競争とかは? あれも競技じゃないですか(笑)

【為末】競技ですけど、借り物競争のお題でもめるんじゃないですかね。「このお題は日本人には難しいんじゃないか」とか。でも確かに、運動会を国際的な規模でやっても面白い気がしますね。洗練されている競技も多いですし。

【みうら】運動会って日本独自のものなんですか?

【為末】そうですね。近いところで言うとアメリカにはジャガイモ袋に入ってレースするような、お祭り競技はありますが、日本みたいにいろんな種目をする大会はないんじゃないかな。

【みうら】日本では父兄まで参加しますからね。俺も最近、子どもの運動会に出なきゃなんないことになって困ったんですけど、嫌を克服するためには、避けてはいけないことに気がついたんです。仕事もそうですけど、「全部やってみる滑稽さ」で克服できると思って、全種目出ることにしました(笑)四角い箱を転がしながらポールを回ったりするんですけど、とんでもないところに行くものだからみんなに笑われる。運動会には「笑われる」っていうのが入っていて、オリンピックにはそれがないんですよ。

【為末】そういう大会をつくったら面白そうですね。運動会とオリンピックのあいだくらいの。

【みうら】「オリンピッ会」みたいなやつね。ちょっと笑えるようなセンスが入っていて、観ている人も楽しめるような。

みうらじゅん 
1958年京都市生まれ。武蔵野美術大学在学中に漫画家デビュー。以来、漫画家、イラストレーター、エッセイスト、ミュージシャンなどとして幅広く活躍。著書に『アイデン&ティティ』、『マイ仏教』、『見仏記』シリーズ(いとうせいこうとの共著)、『人生エロエロ』、『正しい保健体育 ポケット版』など。最新刊は『ない仕事の作り方』。音楽、映像作品も多数。1997年「マイブーム」で新語・流行語大賞受賞。2005年 日本映画批評家大賞功労賞受賞。 
為末 大(ためすえ・だい)

1978年広島県生まれ。陸上トラック種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得。男子400メートルハードルの日本記録保持者(2014年10月現在)。2001年エドモントン世界選手権および2005年ヘルシンキ世界選手権において、男子400メートルハードルで銅メダル。シドニー、アテネ、北京と3度のオリンピックに出場。2003年、プロに転向。2012年、25年間の現役生活から引退。現在は、一般社団法人アスリート・ソサエティ(2010年設立)、為末大学(2012年開講)、Xiborg(2014年設立)などを通じ、スポーツ、社会、教育、研究に関する活動を幅広く行っている。http://tamesue.jp
(大矢幸世=構成 遠藤素子=撮影)
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