あん馬が気になる!

【為末】アスリートってあんまりふざけちゃいけない雰囲気があるんですよ。

【みうら】一応だめなことになってますよね(笑)でも、アスリートも普通に考えたら確実に変態ってことやってますよね。スポーツだと思って見るからみんな麻痺しているけど、プールでこう脚を上げる人とか……。

【為末】シンクロナイズドスイミングですね。

為末大さん

【みうら】プールから『犬神家の一族』みたいに女子選手が水面に足を突きだして開脚するなんて、普通に考えたらおかしいですよ! でも誰もがその疑問を1回打ち消して観ているんですよね。スポーツという名のもとでやっている神聖なことだから。スポーツにはギリギリのタブーがあるから、そこはないことになっている。

【為末】そうですね。スポーツはタブー感が強いですよね。

【みうら】マラソンだってあそこまで服を着ないんだったらもう素っ裸でもいいじゃんって思いますけど(笑)

【為末】走れメロスみたいに(笑)

【みうら】でもさすがに素っ裸だと捕まりますもんね。みんな笑わないけどスポーツって、よく考えるとギリギリなことをやってるような気がするんですよね。

【為末】そう考えるといちばん不自然なスポーツってなんですかね。

【みうら】あん馬、ですかね(笑)あれってもう意味がわからなくて。あれは馬に模して背の部分に鞍を付けたっていうことなんですかね。

【為末】そういうことなんでしょうね、きっと。

【みうら】だったらもう馬でいいじゃないですか。代々木の五輪橋にもあん馬のモチーフがありますよね? まだ誰も気づいてない風ですけど。自宅にあん馬を持っている人も見たこともないし、「俺、あん馬やってるんだ」っていうやつなんて周りにひとりもいませんから。どうやってあん馬を目指すのか、疑問でしょうがなかったですよ。

【為末】体操から入るんでしょうね。

【みうら】床や吊り輪から入って、そのうちコーチが「君、あん馬やらないか」って誘う日が来るんですかね。

【為末】ハードルも多いですよ。「君、ハードルやらないか」って。

【みうら】タイミングがあるんですか。

【為末】タイミングもありますね。そう言われて移るケースは多いです。おそらくあん馬にも向き不向きっていうのがあるんでしょうね。どういう人があん馬向きなのかはよくわからないけど。

【みうら】カーリングやカバディに比べてあん馬は地味でそのおかしさが気付かれ難いですけどね。でも、いろんな競技がオリンピックからなくなるかどうかで揉めているなかで生き残ってるんですよ。そこがスゴイ。

【為末】あん馬は生き残ると思いますよ。

【みうら】なぜあん馬だけは生き残るんですか。

【為末】スポーツのなかでもなんとなく聖域みたいなものがあって、体操、陸上、水泳……そのへんは生き残るでしょうね。