住む場所が変われば、目線も変わる
人前で国際情勢を語るときに具体的な地名や人名が出てこないようでは、説得力もクレディビリティ(信頼性)もない。アルゼンチンの政権交代の話題を振られてパッと意見が言えないようでは、世界のビジネスマンとパワーランチはできない。一流のビジネスマンを目指すなら、気合を入れて自分に投資すべきだし、時間配分を変えて自己改造に励むべきだ。自分が2段階ぐらいステップアップしたときをイメージして、リーダーシップなり思考法なり教養なりを勉強する。時間配分を変えて捻出した時間で演説の練習をしてもいい。たとえば土日に家族をシャットアウトして、録音しながら演説の練習をする。私もマッキンゼー時代の初期に、プレゼンテーションの練習をよくやったものだ。
自分を変える方法の2つ目は「住む場所を変える」。住む場所を変えるだけで、随分視点が変わってくる。たとえば同じ中央線沿線でも高級住宅街の国立と個性的な商店がひしめく高円寺では雰囲気が全然違う。谷中から浅草にかけての下町や流行りのウォーターフロントに住んでみるのもいい。同じところに住んでいると、目線がそれしかなくなって周囲の環境に対して敏感に反応しなくなってしまう。住む場所を変えるだけで目線が変わるし、新しい発見がある。東京が違って見えてくるのだ。もちろん、引っ越すとなればエネルギーも時間も使う。しかし、それもいい。無駄なエネルギーと時間を使わないためには、自分の人生にどうしても必要なものだけを選ぶことになる。自分を変えるという意味では、捨てるのも大事なことだ。引っ越しが難しければ、通勤ルートを変える手もある。最短距離を探求するばかりではなく、時には時間を無視して電車やバスの路線を変えたり、乗換駅を変えたり、自宅から駅までのルートを変えてみる。やはり見えるものが違ってくる。歩いていても眼と頭が回転しているのがわかる。
もっと言えば、目をつぶって歩くだけで見えてくる世界がある。
普段頼りすぎている視覚情報を遮断して、聴覚や嗅覚、触覚で世界を感じるだけで頭が刺激されるのだ。