何をすれば監督に評価され、ファンに褒められるのか

独自の理論であり、しかし客観的な洞察は、細心の注意を払っている男だからこそ獲得できた視点ではないか。ミランに欠けている力を持つチームとして、スペインのアトレティコ・マドリードの名前を挙げた。

「このクラブからは毎年のようにストライカーがビッグクラブに移籍する。過去にはアルゼンチン代表のアグエロ、コロンビア代表のファルカオなどを輩出しました。そういう『血』のチームなんです。有望な若手が活躍できるルールやシステムが、おそらく整っている。(香川)真司の所属している、ドイツのドルトムントも同じです。ポーランド代表のレヴァンドフスキなど、次々に所属している選手が活躍し、ビッグクラブに引き抜かれていく。こうしたクラブには、サポーターから、クラブ経営陣、選手たちに至るまで、一貫した考え方、つまりチームの哲学がある。ここで大事なのは、評価のされ方だと思います。どういうプレーをしたら、ファンに褒められるのか、社長は契約を更新してくれるのか、監督に認められて試合に出続けられるのかという基準が、クラブ全体に浸透している。それが、クラブの文化であり歴史だと思う。選手たちは、クラブのために尽くそうと考えられるわけです。さらには、若手たちも前例を見ているから、同じようにすればいいのだと正解がわかる。だから、1年間成果が出なくても、右へ行ったり、左へ行ったりしようとしない。それなりに続けるうちに、さほど能力のある選手でなくても、ある程度の結果を残すことができるようになる。いい組織は、短期的に見すぎないということです」

アスリートとしてだけでなく、経営者としても、自らに高いハードルを設定し、自分の能力を高めようとする。今、取り組むべきことのひとつに、指導者の育成を挙げる。

「直接指導もしたいけれど、ほかにやることがたくさんあって、できない。だから、自分にできることは、いい指導者を育てること。子供たちに、『その程度の目標で満足か』とそそのかし、目標の上限を引き上げるような役がどうしても必要なんです。目標を高く設定さえできれば、あとは逆算してそこへどうたどり着くか。『本田圭佑の生き様論』を実行するのみです」