2050年までに叶える、ビジネスマン本田圭佑の「夢」
ビジネスマン本田圭佑の壮大なプランは、すでに見事な「ピラミッド」を完成させつつある。
底辺の小学生主体のサッカースクールの創立は2012年。現在、全国各地に約50校を展開する。14年からは東京と大阪に1チームずつジュニアユースチームを、グループとして運営してきた。そうして15年、オーストリア3部のプロサッカークラブ、SVホルンの経営に参加することを決めた。
さらに16年には、千葉県の幕張にサッカーグラウンドやフットサルコートを完備した「ゾゾパーク ホンダ フットボール エリア」を開設するとともに、ソルティーロFCを新たに結成し、グループ初のユースチームおよびジュニアユースチームを送り出す。
SVホルンは、15年7月の入団テストを経て、J2コンサドーレ札幌から榊翔太選手を獲得。また、同じく12月から始まったトライアウトにも、書類選考を通過した約60名の若い選手たちが全国から集まった。日本の若者が欧州のクラブの門を直接たたくということが、現実にスタートしているのである。
現在リーグ3部のSVホルンが掲げる目標は、5シーズンでチャンピオンズリーグの出場権を獲得。チームの状況は15~16年のシーズンの16節終了時点では1位。16年には2部に再昇格し、翌、16~17年のシーズンでは、いきなりの2部優勝を狙う。
このチームに、日本から多くの若者を送ることをもくろむソルティーロFCでは、スーパーバイザーに元日本代表の秋田豊氏を招聘するなど、スタッフ陣営にも世界を知る人々を集結させる模様だ。人選の理由を本田はこう語る。
「今回のプロジェクトでは、『世界で活躍する選手の育成』をコンセプトにしています。ですから、指導者もトレーナーも、世界を知る人々にお願いしたい。そういう考え方から、秋田さんに会って、子供たちや監督に秋田さんの経験を伝えてほしいとお願いしました。あえてディフェンダーだった秋田さんを選んだのは、自分ではなかなか伝えきれない部分も、伝えられるのではないかと思ったからです」
サッカースクール、ジュニアユース、そしてユースに参加する子供たちに対して、本田は、世界を目指すことを強力に支援する。
「自分の殻を破ることは、日本人には文化としてまだ根付いていないかもしれません。でも、片言の英語レベルは当たり前に必要とされる世の中になって、今は海を渡ることもそれほど難しいことではない。であれば、自分で目標を決め、あとは目標に向かって行動するだけ。よく子供たちにも言うのは、『みんなプロになれる可能性はある』ということです。誰もがモチベーション次第で環境を選ぶことができます。それは、出会う人、付き合う人まで選べるということです。だから、目標を決めたら目標に向けて行動する。そうすれば、夢は叶う」
名古屋グランパスエイトでの3年を経てオランダへ渡り、2部に降格したチームの再昇格を主将として率いた本田は、その後、ロシア・プレミアリーグを経て、念願のセリエAへと活躍の場を移してきた。困難な道を自ら切り開いてきたからこそ描ける壮大なピラミッドは、単なるビジネスプランを超えて、とても魅惑的だ。