昔からの友情が何十年も続くケースは2つしかない。1つは自分と一緒に友人の信頼レベルも上がっていく場合。もう1つは共通の趣味があって、社会的成功とは無縁のところでつながっている場合。そうでなければ、つきあい続けるのは難しい。

仮に自分が会社を辞めてMBA留学し、帰国後、起業したとしよう。こうなると同期入社の仲間からはあまり連絡が来なくなる。置いていかれたような気がするからだ。ところが自分はそれに気づかず、無邪気に「またみんなで飲もうよ」などと言ってしまう。会社に残ったほうにしてみれば、それがまた気に障るわけだ。

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「友人は多ければ多いほどよい」は約6割から約3割へ半減

こうなると関係を無理に継続しようとしても、両者にとって不幸なだけ。無理に関係を維持しようとすると、自分はいまのレベルを下げることになり、現在の世界で築いている信頼関係を失ってしまう。それよりは一緒にいて前向きになれるような人と、より多くの時間を過ごしたほうが成長できる。だから僕はこんなとき、「古い関係を失うことを恐れてはいけない」と言いたい。それを手放すことで、新しい段階での信頼関係を築くことになるからだ。

しかし、あえて絶縁宣言をする必要もない。あっけらかんと普通にしていれば、何年かしてつきあいが復活することもある。40代半ばを過ぎると、誰しも自分の限界が見えてきて、誰が成功したとかしないとか、どうでもよくなってくるからだ。ゆったりと構えて細かいことは気にしないのが、人間関係を長く続けるコツである。

もちろんすべてが嫉妬によるものとは限らない。失礼な言動がなかったかどうか、反省することは必要だ。だが万人とうまくつきあうことなど不可能。古い関係の修復に腐心するよりは、そのエネルギーを新しい友人づくりに使ったほうがいい。地球上には70億人、日本だけでも1億2000万人の人間がいるのだから。

慶應義塾大学 政策・メディア研究科 特別招聘教授 夏野 剛(なつの・たけし)
1965年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京ガス入社。95年ペンシルベニア大学経営大学院卒業。97年NTTドコモ入社。iモードの立ち上げに関わる。現在はドワンゴなど複数の取締役を兼任。著書に『ビジョンがあればプランはいらない』など多数。
(構成=長山清子 撮影=永井 浩)
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