テレビの報道番組では、リベラル色を前面に打ち出した「反権力」のコメンテーターをよくみる。だが慶應義塾大学政策・メディア研究科特別招聘教授の夏野剛氏は、「いまのテレビは60代以上に向けてつくっており、その世代はリベラルで安倍政権を支持しない人が多い。だが7年後までに高齢世代が入れ替わるため、番組内容も自ずと変わらざるを得ない」という――。
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※本稿は、夏野剛『誰がテレビを殺すのか』(角川新書)の一部を編集部で再編集したものです。

「あと7年」で起きる高齢層の世代交代

これからの日本の人口動態を考えた場合、2015年の時点で70代だった人たちは、2025年には80代を迎えます。平均寿命を考えると、2025年になるころにはこの世代の人口はかなり減少していると見ていいでしょう。つまり、2025年までには人口構成が変わり、2015年時点で55歳以上の人たちが2025年には新たな高齢者となるのです。

2015年の段階で70代以上だった人たちにはいわゆるリベラル層が比較的多く、政治的スタンスとしては、安倍自民党に対して不支持の姿勢を表明する人が多くいました。しかし2025年になると、これらの層の人たちは減少し、存在感も薄れていくはずです。

テレビ局にとって、60代を含むこの層がメイン視聴者であることについてはすでに述べました。そのため、今のテレビはこの層が喜ぶようなコンテンツ作りを行っています。しかし、2025年を迎えるころまでには世代交代が起きると予想されるため、それに伴ってテレビ局側のスタンスも変わってくるでしょう。

「反権力」が視聴者にウケなくなる?

今後、テレビ局が直面するであろう現実は、リベラル色を前面に打ち出した番組内容では視聴率が稼げなくなるということです。これまでは、60代、70代以上の人たちに受け入れられるようにコンテンツを作り、それに合わせたコメンテーター選びが功を奏してきましたが、今後はその路線がウケなくなります。人口構成の変化により、2025年までの間に報道番組の位置づけはガラリと変わっていく運命にあるのです。

テレビ局は今から実際に変わっていかないと、人口構成の変化に間違いなく乗り遅れることになるでしょう。

本来であれば、こうしたことにいち早く気が付いた事業体が反権力ではないテレビ局を新設する動きが出てくると、日本のテレビも活性化すると思います。しかし、規制が厳しい日本ではこうしたことは絶対に起きません。

新しいテレビ局は誕生しませんが、その代わり、既存のテレビ局が新しい姿勢を打ち出すことになるでしょう。日本のテレビ局は主義主張で凝り固まっているわけではなく、柔軟性を十分に備えているのです。自分たちの生き残りのために必要となれば必ず姿勢を変えてくるはずです。残されている時間はあと7年。あまり時間はないのです。