相手に理由を問うてはいけない

ケンカをしたわけでもないのに、友人から突然、連絡を絶たれてしまったとする。こんなときまず思うのは、「知らないうちに、何か信頼を失うようなことをしたかもしれない」ということだ。しかし何も思い当たる節がないのなら、それ以上気にしないほうがいい。馬鹿正直な人は、「何か気に障ったのならはっきり言ってくれ」と迫るかもしれないが、まず本当のことは言ってくれないだろう。

これが女性同士なら、「あなたのためを思って」と欠点を指摘することもあるかもしれないが、男同士でそれをやったらおしまい。同列の関係ではなくなってしまうからだ。仮に「それなら言わせてもらうが……」と言って相手が心中をぶちまけるようなら、すでに関係は修復不可能なところまで壊れている。そのような相手と話をしても仕方ないだろう。

したがってこの場合、こちらからできることは一切ない。理不尽だと思うだろうが、そもそも人間関係において、自分でどうにかできる範囲は50%なのだ。あとの50%は相手次第。特に同性で年齢が近いとか、学生時代からのつきあいなど古くからの関係においては、自分は何もしていないのに、相手が離れていくことがある。つまり自分が成功すればするほど、うまくいかなくなる人間関係もあるということだ。

たとえば新入社員に求められる信頼と部長に求められる信頼とでは重みが違うように、役職や社会的な地位が上がるにつれ、必要とされる信頼のレベルは変化していく。一方がどんどん上に行くのに、もう一方はいつまでも同じところに留まっていると、その信頼レベルがずれてきて、昔と同じようにはつきあえなくなってしまうのだ。