逆に、やたらとお客さんに感想を聞く店は、「うまく回っていない」ことが多い。ましてや、さまざまな項目にわたるアンケートをとるような店は、サービスについて、根本的にアプローチが間違っているのかもしれない。
サービスを提供する側が、お客さんのふるまいを十分に注意して観察していれば、たいていのことはわかる。目や耳から入ってくるデータに基づき顧客満足度を把握し、改善に努めれば、わざわざお客さんに質問しなくても、良質のサービスを提供できるのだ。
最近の大学では、授業についてのアンケートをとる。
授業は、シラバス通り行われていたか?
教師は、質問にわかりやすく答えていたか?
興味、関心を持てるようなかたちで授業を進めていたか?
アンケート項目を見ていると、質問をするまでもなく、授業中の学生たちの様子を見ていればわかるのではないかと感じることも多い。
学生たちの顔は、こちらを見ているか? 表情は好奇心で輝いているか? 寝たり、私語をしたり、スマホをいじっている者はいないか? そのようなポイントを観察していれば、学生にとっての授業の質は、把握、維持できるはずなのである。
熟練した教師ならば、学生たちが少々だれてきたら興味を持つような余談を言って笑わせ、再びぎゅっと締めて授業に戻るなど、緩急自在の進行ができるはずだ。授業アンケートで学生たちの感想を聞くまでもなく。
なぜ、一流レストランではアンケートをとらないのか。良質なサービスの本質について考えるヒントがここにある。