社長になった本当の理由
【田原】今年6月、川上さんはKADOKAWA・DWANGOの会長から社長になりましたね。これはどういう経緯で?
【川上】こんなこと言っていいのかな。えーっと、ホントの理由というのは、僕が折れたんですよ。
【田原】どういうこと?
【川上】角川会長は、KADOKAWAとドワンゴが統合したら新会社の経営は僕にやれって、もともと言っていました。でも、僕は逆に角川会長に表に出てもらい、その陰で仕事をしたかった。そこをきちんと話し合わないまま一緒になった結果、何が起きたのかというと、僕が会社の重要な会議に出なくて、角川会長を怒らせちゃったんです。
【田原】そりゃまあ怒りますよ。
【川上】でも、角川会長も僕に対抗して出なくなったんですよ。それで二人院政みたいな形で会議が進むようになり、現場の関係がどんどん悪くなってきてしまった。そうなると、年齢が若い僕が折れるしかない。それで社長やりますと言ったわけです。
【田原】いまは川上さんが社長になって決裁権を持たされたから、日常業務もやらなきゃいけないんだ。
【川上】それはつらいですよね。だから僕が社長になったときの最初の取締役会で、社長の決裁権限を担当取締役にどんどん委譲しました(笑)。でも、会議には出るようにしています。日常業務も、ある程度はやらざるをえないです。
【田原】おもしろい。普通の会社は、トップが権力を持って会社をコントロールします。でも、ドワンゴは違った。トップが会議に出ないほうが、逆にうまくいくのかな。
【川上】どうでしょう。僕はドワンゴで2回、失脚していますから。会議に出ないどころか会社にこないから、誰も言うこと聞かなくなったんです。
【田原】そんなことがあったの?
【川上】そのまま辞めてもよかったんですけど、たまたまそのとき手がけた着メロやニコ動が当たって、急にみんな僕の言うことを聞くようになりました。新しいビジネスをつくれる人は少ないから、頼られたんですね。少し前、僕はジブリに1年間くらい行って会社にほとんどこなかった。いつもなら失脚するパターンですが、今回は大丈夫だった(笑)。