【田原】失脚したのに新事業を当てたというのがすごいね。だって社員は誰もついてこないわけでしょう?
【川上】だから勝手にやりました。着メロのときはドワンゴの社員を1人も使わず、完全に社外の人間でやった。ニコ動も、クビ寸前で誰からも評価されていない社員を集めてサービスをつくった。僕がやろうとしているのはわけがわからない事業だから、みんな逃げます。説得は無理なので、巻き込もうとせず勝手にやったほうがいいんです。
【田原】それにしても、どうして成功できるのか不思議です。
【川上】いやぁ、運がよかったんじゃないですか。
【田原】運だけじゃ成功は続かないでしょう。
【川上】あえて言うなら、失脚したのがよかったんじゃないでしょうか。僕は、既存のビジネスをやりながら新規事業をやるのは無理があると思っています。新規事業は自分のすべてを注ぎ込まなくちゃいけないのに、本業があったらできませんよ。その点、僕は失脚して自由だった。
【田原】失敗したときこそ飛躍するチャンスだね。もう1つ。この10月、社名がKADOKAWA・DWANGOからカドカワに変わりました。これはどうして?
【川上】僕はKADOKAWA・DWANGOって名前が嫌いだった。長いし、なんかかっこわるいし。実は1年前、カドカワって名前がいいんじゃないかっていうことを、1回、提案しているんですよね。
【田原】ドワンゴの川上さんが、カドカワがいいって言ったわけ。なんでドワンゴをやめちゃう?
【川上】いや、それが一番、収まりがいいかなと思って。やっぱり歴史のある会社のほうが、名前にプライドを持っていると思うんですよね。そんなところでこだわってもしょうがない。損得で考えようと。もちろん、ドワンゴもいいブランドだと思っているので、ドワンゴっていう会社が残ればそれでいい。
【田原】そこは残るわけね。
【川上】はい。カドカワの下に、KADOKAWAもドワンゴもそのまま残ります。
【田原】なるほど。今日はとてもおもしろかった。これからの展開を楽しみにしています。