「僕は、女性と付き合うときに、どうすれば相手のほうから逃げていくかをいつも考えている。そして『これ以上深入りするとまずい』と思ったときは、この技法を用いることにしている」
「どういう技法を使うのですか」
「相手に嫌われることをする。例えば、欧米人の女性が相手の場合、スープをズルズルとすすって飲む」
「そんなことで効果があるんですか」
「かなりある。相手が教養のある女性の場合、これでかなりの確率で相手が逃げていく」
「文化の違いだと思って、許容してくれる女性もいるんじゃないですか」
「そういうときには、高級レストランで食事をしているときに、相手の目の前で鼻糞をほじる。こうすればまず確実に逃げていく。今までに失敗はない」
「日本人の場合もそれは通用しますか」
「欧米人と比べれば効果が薄い。しかし、日本人女性が逃げていく究極的な技法がある」
「どんなことをするんですか」
私は身を乗り出して尋ねた。先輩は、にやりと笑ってこう答えた。
「相手の親の悪口を徹底的に言う。そうすれば、どんな女性でも逃げていく。これは万国共通で、もっとも効果的な技法だ」
「しかし、相手から恨まれます」
「そんなことを気にしていては、女遊びなどできない。自分の家庭を維持しながら遊ぶにはこれしかない、と僕は思っている」
この種のブラックな「雑談する力」は、使い方に十分注意しなくてはならない。
1960年、東京都生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了、外務省入省。在露日本国大使館等を経て国際情報局分析第一課。2002年、背任および偽計業務妨害容疑で逮捕。09年、執行猶予付き有罪確定、外務省を失職。主著に『国家の罠』『自壊する帝国』、近著に『超訳・小説日米戦争』『人に強くなる極意』ほか。