受験対策が本物の英語力に結びつく

【三宅】大学入試の話に戻りますが、英語改革ですけれども、4技能の測定に変えることが、学習者にはどのような影響があるでしょうか。センター試験対策と同様に「TEAP」対策が始まるだけだと言う人もいますけれども、生徒たちは、新しい英語教育、新しい4技能重視のものが大学入試に入ってくるということに、どのように対応していったらいいと思われますか。

【本間】「TEAP」を制作しているときの思想の1つとして、「受験者は必ず、対策をしてくるだろうと。ならば、対策をすることで、本物の英語力が身につくようなテストにしたい」と考えました。そういったことを話し合いながら作っていったという経緯があります。つまり、テストの対策をすることで、4技能プラス、コミュニケーションの勉強になるというのが「TEAP」だと考えていいでしょう。

【三宅】受験勉強が無駄にならないのですね。受験勉強がそのときだけのもの、大学に合格したら終わりのものではなくて、対策がそのまま本物の英語力に結びつくと。

【本間】試験そのものは、コミュニケーションのテストなので。さらに、それが学問の状況から離れたことではなくて、英語で学問をする場を集約したようなタスクが入っていますからね。

【三宅】英語教育の指導者問題ですけれども、今回の英語教育改革の中で、小学校の先生も英語で英語を教える。中学校の先生も英語を英語で教えなさいと。これは高等学校の先生もそうですが、誰も自分が受けたことがないものを、やれと言われるのは、なかなか難しいものがあるとは思います。

教育研修なども行なわれておりますけれども、当社ではこの夏に、全国5会場で中学校、高等学校の英語の先生を対象に、英語で英語を教えるセミナーをやりました。一番興味があるのは、英語で文法をどう教えるかということでした。ところが、先ほどの会話の中から文法の法則を掴めるということを知って、皆さん驚き、感心します。さて、本間さんも教員を目指されたコトがあるということですので、全国の教員の皆さんへメッセージをいただけますか。

【本間】実は、私もセミナーにお邪魔させてもらい、英語で英語の文法を教えるという驚きの体験をしました。教育現場の先生の気持ちを改めて理解できた気がしました。メッセージというと、ちょっとおこがましいのですが、前回、私の父親の話をしましたが、私が大学4年のころ、父親が定年の直前に、一緒にお酒を飲んでいると、彼が「俺たちの時代では無理だ。おそらく、お前の時代でやっと英語教育は変わるんじゃないか」とつぶやいたことがありました。

その後は、仕事が忙しく、その会話はなかば忘れていましたが、まさに英語教育の潮目のいま、父親との会話をふと思い出しました。そんな歴史の転換期に立ち会える私たち英語教育関係者は、とてもラッキーです。それを誇りと思って、多くの先生方と一緒に英語教育の改善に携われたらいいと考えています。もう一生に一度あるかないかぐらいの、大きな転換期だと思うので、ぜひとも誇りを持って取り組んで、一緒に英語教育を変えていければ嬉しいですね。たぶん、先生たちも自分の生徒たちの未来を大切に考えているはずです。実用的な英語力を身につけさせてあげたいという気持ちでいっぱいなはずなんですね。その思いを実現できるときがやってきたということではないでしょうか。

【三宅】本日はありがとうございました。

(構成=岡村繁雄 撮影=宇佐見利明)
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