算定基準の改訂に気をもむのは誰だ

少子高齢化に伴う人口減という点では、昨年5月、安倍晋三政権の政策立案にも影響力を持つ、有識者で組織する日本創成会議(座長・増田寛也元総務相)が発表し、物議を醸した「消滅可能性都市」に、東京都豊島区がリストアップされたことは記憶に新しい。消滅可能性都市とは出産適齢期の女性の人口が2040年までに半減し、少子化と人口減少に歯止めがかからず、存続が困難になる自治体を指す。

人口流入の受け皿の東京で、しかも、日本有数の歓楽街の池袋を抱える同区が挙がったことは意外感をもって受け止められた。創成会議による国勢調査をベースにした試算の上では、出産適齢期で単身の女性が多い同区はその可能性が想定される。警備費が新たなCPIの調査対象品目に加えられた背景がある意味うかがえる。

しかし、一般の消費者にとって、毎月のCPIの動きは実生活に直接影響を及ぼすことはない。公表された数字から物価が上がった、下がったと判断するにしても、CPIに関係なく、収入が増えればちょっとした贅沢をし、収入が減れば不要な買い物を控えるだけだ。

半面、今回のCPIの算定基準の改訂に最も気をもんでいるのは、「物価の番人」である日本銀行、引いてはアベノミクスによる「デフレ経済からの脱却」を最優先課題に据えた安倍政権である。民間シンクタンクの多くは今回の調査対象品目の入れ替えに伴うCPIへの影響は軽微と指摘する。

米国の利上げの行方、中国経済の減速、さらに、ここにきての中国発の世界規模での金融市場の混乱は、日銀が「2016年度後半頃」に先伸ばしたCPIの「2%上昇」の目標達成に危うさが漂うばかりだ。その意味で、安倍政権、日銀は算定基準改定による影響に気が気でない。

関連記事
日本の難題「少子化」を食い止める改革私案
「35人学級」とは誰のために必要なのか
産みたい女性にとって、日本企業はみんなブラックである
国力も産業も劇的に衰退させる「少子化」の破壊力
東京の高齢化にどう備えればいいか