越境を躊躇してはいけない

実は日本は、越境がやりやすい国でもあります。アメリカでは分業が徹底しているので、越境して活動する人は多くはないし、評価もされにくいと思います。エリートたちも、自分の守備範囲外のことにはあまり手を出しません。経営コンサルタントのようなプロフェッショナルが社会活動に参画する場合も、専門家としてブレーン集団の1人になるというパターンがほどんどで、自らが行動をリードするケースはまれです。

一方、日本では越境が比較的容易です。一介の経営コンサルタントが産業政策や都市計画を語っても、中身がしっかりしていれば、政治家も官僚も真摯に耳を傾けてくれるし、ときにはアイデアを採用してくれます。政府が策定した大方針を受けて、コンサルティング会社が具体化の作業を請け負うケースは各国でありますが、コンサルタントの側が初期提案を行い、それが政策に昇華されていく、という動き方は米国ではあまり見られません。

「私のチームで練ったアイデアを官邸や自民党に提案に行った」とニューヨークの同僚たちに話すと、みな一様にびっくりします。「閣僚や政府高官が、ビジネスコンサルタントの政策提言をまじめに聞いてくれるのか?」という素朴な驚きのようです。彼らの常識ではありえないくらい、日本は分業の壁、専門の壁を超えやすい国なのです。

せっかく越境しやすい環境があるのですから、これを活かさないのはもったいない。興味を引かれたテーマがあるなら、自分の専門外であろうと遠慮せずに飛び込めばいいのではないでしょうか。

※本連載は書籍『グローバルエリートの仕事作法』(梅澤高明著)からの抜粋です。

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