親が自分の目で確認しよう
子供が新宗教に惹かれるのには、何かしら理由があります。たとえば「精神面で親の影響から逃れるための成長のステップ」とも考えられます。多くの場合は一過性で、ほんの数年で熱が冷め、宗教から離れていくものです。逆に何年も教団から離れられない人は、家族関係に問題があるのかもしれません。解決のためには、家族の問題と向き合う必要があります。親がそこから逃げている限り、子供を宗教から引き戻すことはできません。
子供が何かの宗教に染まりかけたとき、もっともまずい対応は、その宗教を頭ごなしに否定することです。そうした団体は、家族の反対に慣れており、それを前提として布教しているからです。自分が信じるものを頭ごなしに否定されれば、子供は頑なになって、話し合いすら拒否するようになります。家族と対立し孤立した子供は、親身になり相談に乗ってくれる教団関係者を頼るようになり、入信する方向に向かいます。
大切なのは、新宗教へのマイナスイメージをいったん捨てること。こちらが偏見を抱いていると感じると、話を聞いてくれません。まずは子供の考えを受け入れ、誘われたら一緒に集会に参加するなど、自分の目で確かめる姿勢を見せることです。
オウム事件以来、新宗教を恐れる人が多いのですが、宗教団体は暴力団ではないので、過度に怖がる必要はありません。社会経験豊富な大人の場合、教祖に説教されたからといって、自分まで洗脳されてしまう心配はないし、「寄付しろ」と金品を強要されることも、普通はありません。むしろ親が「大変なことになった」と心配しすぎるほうが、問題を大きくしてしまいます。
わが子がはまっている宗教について、真摯に理解しようとする態度が、子供の心を溶かし、話に耳を傾ける気持ちを生むのです。
1953年、東京都生まれ。都立西高校から東京大学へ進み、同大学院修了。『日本の10大新宗教』『なぜ八幡神社が日本でいちばん多いのか』など著書多数。