「いま土木業界には、不況時に就職の時期を迎えた30代から40代のオペレーターがいないんです。熟練オペのほとんどは50代以降の人たち。工事量の少なかった頃はよかったのですが、震災以降の工事の増加で人手不足が一気に顕在化してきたんです」

2013年に社長に就任した大橋には、この課題を建機メーカーとして解決するための「種をまくこと」が、自らの使命だという思いがあった。

コマツ 社長兼CEO 大橋徹二氏

大橋は社長就任時に掲げた中期経営計画を「Together We Innovate GE MBA Worldwide」と名付けた。コマツにおける「イノベーション」とは技術革新だけではなく、現場にこれまでになかった新しい価値を生み出すことだと彼は言う。翌年4月には、外部のソフトウェア会社などとも連携を深める目的で、先進の技術を収集・調査するCTO室を立ち上げている。

その中で呼び出されたのが四家だった。四家はもともと地元・福島県で建機のレンタル会社を営んでいた人物で、他社に先駆けてコムトラックスを活用し、保有する建機の稼働率を飛躍的に高めた実績を持つ。2008年に自社をコマツに売却してからは、建機メーカーの立場から工事現場の効率化に取り組んでいた。建機の使われ方に精通する彼は、新しいプロジェクトのリーダーに打ってつけだった。

「新しいビジネスモデルを、早急に作りたい」と大橋は四家に言った。

当時、コマツレンタルの社長としてICT建機の導入を進めていた四家は、日本での普及にはまだまだ課題があることを感じていた。それは3D測量など専門家による「情報化施工」が一般的になりつつある北米や欧米の市場に対し、中小の建設会社が多い日本ではICT建機の性能を活かしきれていないという問題だった。

「駐車場の土地の造成を行うような単純な工事では、確かにICT建機の導入で工期が3分の1になったんです。そのときはICT建機を売りさえすれば、それでいいんだという雰囲気が社内にもありました。ところが工事が少しでも複雑になると、ICT建機を入れても生産性があまり上がらないことが分かってきたんです」(四家)