息子にシモの世話をされた老父は……
まず、私の家のケースです。
家族は89歳の父とひとり息子の私、契約社員として平日仕事をしている妻と社会人になったばかりの娘の4人です。介護ドキュメント(http://president.jp/articles/-/12179)で書いたように、その父親が突然寝たきりになりました。私はひとり息子ですし実家で同居、しかも家で仕事をすることが多いフリーのライターですから、当然私が介護をすることになりました。
すぐに地域包括センターに連絡をし、ケアマネージャーに来てもらいましたが、いきなり介護の渦中に放り込まれた介護未経験者の私は今、何をしたらわからず茫然とするばかり。そのケアマネージャーは親切な方で、今すべきこと、たとえば介護用ベッドなどの介護に必要な用品をレンタルするための連絡、介護認定の手配などを説明のうえでしてくれましたが、父親の世話に関しては自力で手探りしながら始めなければなりませんでした。
まず直面したのが排泄物の処理、つまりシモの世話です。「ついにこの時が来たか」と思い動悸が激しくなりましたが、自分がやらなければ事態は前に進んでいかないという意識から、自分を奮い立たせて試みることにしました。
▼息子が母を、娘が父を「世話」できるか
なお、ホームヘルパーさんや訪問看護師さんはシモの始末もしてくれますが、要介護度を認定する調査を受け、ケアマネージャーがケアプランを作ったうえでそうした専門家を呼ぶことになるため、その後10日間ほどはすべて自力でその処理をしました。
当初、父は息子にシモの世話をさせなければならないということに精神的な苦痛があるようでした。私もそれを感じたので努めて平静を装い、淡々と処理をするようにしました。この時、ふと思ったのは男同士で良かったということ。
父とは過去に一緒に温泉に入り、背中を流したことがあります。背中を流すのとはレベルが違いますが、何とかその延長ととらえることができました。
しかし、介護される側とする側が異性だった場合、母親を息子が、あるいは父親を娘が世話をすることになったら、抵抗感は大きくなるのではないでしょうか。
寝たきりになった親を前にしたら、それが異性であろうがシモの世話は待ったなしでやらなければならないわけですが、そんなデリケートな部分での抵抗感もあることは確かです。
その頃、私はそうした懸念から派生したある不安がありました。
「親父の介護はいつまで続くんだろう」
ということです。長くなれば、私がつきっきりで世話をできない事態も出てくるはずです。