妻に自分の父のシモの世話を頼めるか

しかし、私の代わりを妻に頼む気にはなれませんでした。私たち親子3人が父と同居をするようになったのは最近で、父と妻、つまり舅と嫁はお互い気を遣い合うような関係。性格的に他人の世話をすることが苦にならない人(看護師や介護職に進んでなるような)はいますが、妻はそういうタイプでもない。見守りや食事の世話ならできるでしょうが、シモの始末は拒絶感があるはずです。

また、もし妻がそれに同意したとしても、父は受け入れないと思いました。紙オムツに便が溜まって不快な状態であっても、嫁を呼ぶことはせず、私やホームヘルパーが来るのを待つ、ということになるはずです。

世間には実母の介護を嫁に任せる人がいるそうですが、私からすれば「よくそんなことができるな」と思います。ただでさえ姑と嫁は敵対関係にあるもの。介護は実の親子であっても感情がぶつかり合うことが多いものですし、嫁姑ともなれば、心のこもった介護など期待できるはずはなく、介護放棄や虐待に発展しかねません。それが家族の崩壊に発展することだってあると思うからです。

ともあれ私は、自分がつきっきりで介護できない状況になったらどうするか、それを考え、不安になったのです。結果的には父の衰えは予想を超える速さで進行し、ヘルパーさんや訪問看護師さんの力も借りたものの私だけでシモの世話は完結しましたが、ひとりで介護を背負い込むとそうした不安や苦労がともなってくるわけです。

▼遺産争いに通じる、介護負担の不均衡

一方、りんこさんの介護体験は状況が異なります。

りんこさんは5歳上のお姉さんと2歳上のお兄さんとの3人きょうだい。その状況で要支援1から徐々に要介護度が進行するお母さんの世話をすることになりました。ひとりで介護を背負い込んだ私からすれば、「介護を分担できるきょうだいがいるのはいいな」と思いますが、きょうだいで介護をするにはそれ以外の大変さがあると聞きました。

介護負担を平等にできないことからくる軋轢です。

お母さんの家に最も近いところに住むのはお姉さん。お姉さんは、りんこさんはクルマで1時間半ほどかかる(遠い)ところに住んでいるという事情と、自分が長女であることもあって、お母さんの面倒を主にみることになりました。

お姉さんはフルタイムのパートの仕事が週に3~4回あり、近所に住んでいるといってもそれをやり繰りしながらの介護は大変だったようです。お母さんは要支援1という軽いレベルから介護が始まったことでも分かるように、よく転ぶという問題はあったものの日常生活はひとりで出来る状態ですから、シモの世話をするまでには至らなかったようです。