『Mi』『攻殻機動隊』が現実化
では、10年後にはいったいどのようなベンチャー企業が活躍しているのでしょうか。未来の悩みなんてわかりませんし、0から1を興すのがベンチャー。今あるものの延長ではなく、まだ目に見える形では存在しない10年後の未来社会の姿を「妄想」する必要があります。それには、未来系のアニメや映画を観るのが手っ取り早い。なぜなら、そうした映画に出てきたアイテムが、後々現実のものとなっている例がとても多いからです。
たとえば『ミッション:インポッシブル3』(2006年)の主人公が変装に使う仮面は、撮影した相手の顔のデータから瞬時に形づくられるんですが、この技術は3Dプリンタで実現しました。また、『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』(11年)にはコンタクトレンズ状の超小型カメラが登場しますが、なんと今、グーグルがこれを実際に作ろうとしているのです。
私の直感では、10年後には先ほどの介護支援ロボットのように、生体情報を記録し、それを新たなサービスに繋げるベンチャービジネスが栄えていると思います。シナプスやニューラルネットワーク系の技術が発展して、脳内にある記憶をデータに落とすとか、寝ている間に見た夢を録画するといったサービスを提供するベンチャー企業が出現しているかもしれません。なぜなら、『攻殻機動隊』(1989年)にそうした技術がたくさん登場するからです。
大友克洋の『アキラ』(82年)が20年の東京オリンピックの開催を“予言”していたように、日本人には素晴らしい妄想力があります。未来を徹底的に妄想し尽くしたとき、そこに未来のベンチャー企業の姿が見え隠れしているのです。
1974年、愛知県生まれ。97年関西大学卒業、日本光電工業入社。アクシブドットコム(現VOYAGE GROUP)ほかを経て2008年サムライインキュベート設立。約60社のベンチャーの社外取締役兼務。