野村証券は規定に「性的指向を理由に差別しない」と明記
LGBTのことを考えるときに、必ず立ちはだかるのが差別の問題だ。日本企業にも彼らに対する偏見をなくしていこうとする動きは、少しずつだが広がってきている。性的マイノリティとその支援者をサポートし、性的マイノリティが暮らしやすい社会を目指すNPO、「虹色ダイバーシティ」のウェブサイトには、同法人が支援する日本企業の取り組みが紹介されている。
野村証券などで構成する野村グループは、グループの倫理規定に「性的指向、性同一性を理由とする差別やハラスメントを一切行わない」と明記。社内にLGBTネットワークを設立し、社員に向けて情報を発信し、主に外資系金融機関で構成されている社外ネットワーク「LGBTインターバンク・フォーラム」の活動に参加するなどしている。大阪ガスも、グループ全体のダイバーシティ推進方針で、性的指向・性自認について言及。LGBTに関するコンプライアンス研修を実施している。
こうした取り組みが増えてきているとはいうものの、LGBTへの理解が浅い日本での現実はまだまだ厳しい。安冨氏は、大手銀行で働く30代のレズビアンの話を例に、「いきいきと働く」とは程遠い企業現場の状況を指摘する。
「銀行などの堅い職場では、カミングアウトはもちろんできません。女性と結婚している男性ばかりの職場で、『なぜ独身なのか』と聞かれ、『いい人がいなくて』と、心にもないことを言い続ける。同居する女性がいるのに、その存在を明らかにすることすらできず、扶養手当申請など論外。イノベーションどころか、働き続けること自体が、大きなストレスになってしまっているのです」