親の無用な「頑張り」にイライラする

連載・介護ドキュメント3の項(http://president.jp/articles/-/12370)で私はこの介護認定調査時の心境をこう書いています。

「私も現状に見合う介護サービスを受けたいと思っていましたから、取り繕うことなくありのままを正直に話しました」

これは下心を隠したわけではありません。この時の私は、どんな介護サービスがあるのかをはじめ要介護度によって利用限度額が異なることも知りませんでした。介護に関する知識が決定的に不足していましたから、専門家にお任せするしかないと思ったわけです。

ただ、「現状より軽い要介護認定をされたら困るな」とは思っていました。ケアマネージャーに聞くと「お父さんの状態を見ると要介護2は行くと思います。要介護3の判定が出るかは微妙ですね」と言われました。だから、要介護2なら納得だが要介護1だと困る、要介護3ならホッとできる、という感じでした。

だから、親の頑張りにイライラしてしまう。親が調査員に対して、子の意に反する言動をするのは、私とりんこさんの親に特殊な事例ではなく、極めて典型的なパターンです(結果的にりんこさんは最初の介護認定で思惑通りの要支援2、私の父も要介護3の判定が下りました)。

▼認定調査時は必ず家族が立ち会うべし

りんこさんは体験記で読者に実例をあげて次のようなアドバイスをしています。

「要介護度の認定調査を本人と調査員のふたりだけでさせてはダメ。本人が状態を良く見せようと頑張るから認定が軽くなってしまう可能性がある。必ず家族が参加して“本人はああ言ってますけど本当はこうなんですよ”と伝えるべきだ」と。

なお、付記しておくと、要介護度が重く判定されるのは必ずしも有利というわけではありません。

デイサービスなどの施設を利用するサービスでは要介護度が重くなると介護職員の負担が大きくなるため利用料金が高くなるのです。また、目論見より低い介護認定しか得られなくても、限度額を超えたサービスの利用に関しては、申請すれば「高額介護サービス費」(利用者の世帯が条件を満たしていれば利用金額のうちの一定額が還ってくる制度)が受けられるケースもあります。

ともあれ今も多くの家庭で、こうした介護認定をめぐる親と子の攻防が行われているはずです。

ネットでは「判定は適正に行われ要介護度に応じて十分なサービスが利用できるようになっている。だから要介護度を重くしようなどと考えるべきではない」といったお役所寄りの見解が見られます。

が、そんなきれいごとでは済まないのが介護の現実でもあるのです。

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