「金持ち優遇」税制が格差を助長!?

実際、先行した教育資金については、信託銀行が扱う「教育資金贈与信託」だけで今年3月末までの2年間の契約件数が11万8554件、信託財産設定額は8030億円と「予想を遙かに上回り」(大手信託銀)、大ヒットしている。

信託銀行に手数料は入らないにしても、「従来の顧客と異なった富裕層の開拓につながった」(同)ほか、子どもや孫まで先々の顧客の広がりも期待できる。信託銀行はこれに味を占め、創設された結婚・子育て資金贈与非課税制度についても「今後、堅調な伸びが期待できる」(同)と早速、新商品投入で飛びついた。

半面、資産を持たない中間所得者以下の層にとっては、この2つの非課税制度はまったく無縁な制度に違いなく、先行した教育資金贈与非課税制度の創設当時から「カネ持ち優遇税制」との強い批判があることも偽らざる事実だ。確かに、非正規雇用が拡大する一方の労働環境下で、金銭面など経済的な要因で結婚に踏み切れない若年層は多い。

こうした背景が婚姻率の下がる一因にもなっている。リクルートグループのゼクシィの調査によると、結婚式にかかる費用も挙式・披露宴で平均333万7000円と高額であり、非正規雇用が多く、失業率の高い初婚適齢期(20~39歳)の男女にとっては到底手が届くはずもない。

創設された結婚・子育て資金贈与非課税制度は、こうした高額な挙式・披露宴を上げたいカップルにはもってこいにしても、中間層以下の家庭に育ったカップルにはあってもなくてもよい制度であることは間違いない。この制度に対して金融界は「結婚・子育て資金贈与非課税制度は少子化対策に寄与できる」と評価する。

しかし、極端に言えば「ゆりかごから墓場まで」カネ持ちが優遇される政策が蔓延するその先にあるのは、格差社会であることは言うまでもない。

関連記事
教育資金“贈与非課税”で大ヒット中の信託商品
祖父母から孫へ。「教育資金贈与」より「暦年贈与」がトク?
「金持ち優遇」てんこ盛りの税制改正大綱
ロバート・キヨサキ「今こそお金に働いてもらいなさい」
アベノミクスの恩恵で元富裕層復活! 資産の6割が「リスク性」