ただし、健診はタダではない。法定の定期健診は会社が費用を負担してくれるが、人間ドックだと5万円前後かかる。それなりに痛い出費だ。
「車を安全に走らせるためには定期的にチェックしますよね。チェックが必要なのは人間も同じ。おそらく車検は8万~9万かかりますが、人間の身体を精密に検査する人間ドックはもっと安いのだから、高いとは思いません」
たしかに健診は、人間の車検だ。ただ、健診には車検と大きく違う点もある。和田教授は次のように指摘する。
「車検は故障個所を修理してくれますが、健診は検査のみです。異常が見つかって、その後どうするかは自分しだい。そこで健診を活かせる人と、活かせない人に分かれます」
では、どうすればいいのか。
「結果票に書かれた注意事項を実行することに尽きます。そのために、結果を見てきちんと保健指導してくれる病院を選ぶことが大事です。『経過観察してください』で終わらせるところは三流。受診者にはどうしようもないですから。また『定期的に検査を受けて』も曖昧です。『塩分の取りすぎに注意して、毎朝自宅で血圧測定してください』と具体的に指導してくれる病院を選び、しっかり実行することで、健診を受けた意味が出てくるのです」
信頼のおける病院かどうかは、検査項目でもわかるという。
「胃がんの9割はピロリ菌感染といわれます。最初にピロリ菌検査して感染していないとわかれば、次回から胃がんの検査は内視鏡ではなくバリウムで十分。こうした提案で受診者の負担を減らしてくれるところは、良心的です。保健指導も信頼できるでしょう」
医学博士。1981年、東京慈恵会医科大学卒業、85年同大学大学院修了。同大学第4内科講師、同大学附属病院総合診療室診療医長などを経て、2008年より現職。日本人間ドック学会理事、日本生活習慣病予防協会理事。『検査と数値を知る事典』など著書多数。