「メビウスの輪」商法から学ぶこと

悪質商法はメビウスの輪のようなものだ。

メビウスの輪とは、細長い1本の紙を180度ひねって他方の端に貼り合わせてできる環のことで、表裏がつながっているため、一方向に紙を進んでいくと、最初に表面だったものが、いつしか裏になっているという輪のことである。

強引に消費者に契約を迫る手口は変わらないものの、「売りつける」という表側が、いつしか「売ってもらう」という裏側になってはびこる。

マルチ商法(連鎖販売取引)もこの手法をとりいれている。最初は、儲かる話があるといって、言葉巧みに誘い込む。仮に販売組織にお金を払って加入すると、自動的に儲けるために自らも勧誘員といて活動しなければならなくなる。

勧誘された側が、勧誘する側に回る。

▼「表を裏に」変える

マルチ商法のシステムでは、勧誘される側を仮に「表」とすれば、販売組織に参加することで勧誘するという「裏」の立場になる。マルチ商法は表を裏にしながら、販売組織の拡大を図っている。

表を拡大
ワルの手口のバリエーションは年々増えている。

様々なビジネスシーンでも、思い切って「表を裏に」変えることで成功を収めることは少なくない。

いわば、逆転の発想である。

大きな胸を小さく見せるワコールのブラは、2010年の発売以来、人気を博している。バストを上げたり支えたりするのではなく、“抑える”ことで美しく見せる機能が特徴だ。胸の豊かな女性にはそうしたニーズが潜在的にあることをつかみ、商品化したと言われる。

靴底ゴムに丸みを持たせ意図的に不安定にすることで、体の筋肉やバランスを整えるという、リーボックのシューズも2011年の発売以降、女性を中心に人気だ。靴底が平らで安定していたほうが歩きやすいが、そこをあえて平らにせず、結果的に、脚やヒップの筋肉活動量を増やすことに成功したのだ。

スマホや携帯電話にも同じことが言える。様々な機能があった方が便利だと思う人がいる一方で、その多機能さゆえに操作方法がわかりにくい、と高齢者などには敬遠される。それゆえに、機能をできるだけシンプルにする真逆の発想で、商品のシェアを着実に拡大させている。