好調事業への異動で人員整理を回避する

リストラの代わりに実施しているのは人事異動です。グループ内で業績の苦しい事業があれば、伸びている事業に積極的に社員を移します。

リストラがなければ緩い雰囲気の会社と思われそうですが、違います。

「誠の愛のため時として鬼になれ! 鬼になりきれない者はリーダーにはなれない。愛する部下に対しても鬼になれなきゃならない。いい人では組織はもたん」

これが僕の人材教育のポリシー。安易にリストラするのではなく、育てるのです。会議の場で、「結論から言え!」と語気を強めて責めたてることもあります。それが僕流の社員教育です。

リストラは最後の判断。その最後の判断をしないで済むように、可能な限りの努力をするべきです。ただし熾烈な競争を勝ち抜くためには、社員一人一人に結果が求められます。だから現実的には、仕事の中で振り落とされる可能性はあるかもしれません。

東京大学経済学部教授 高橋伸夫氏が解説

高橋伸夫氏

解雇による従業員の削減は、企業経営における最後の手段である。どんな企業でも下位10%は勤務状態の悪い人間だといわれる。しかし安易な「クビ切り」は、経営のモラルの低下を招く。経営者は従業員の生活を預かる立場にある。成功する経営者は、そうした重責に身震いするぐらい責任感の強い人間であることが多い。「リストラはしない」という手枷を自らにはめることで、土壇場でも踏ん張れるようになるはずだ。

●正解【B】――「鬼」となって部下を育てられなければ組織はもたない

※本記事は2010年9月29日に開催された「ソフトバンクアカデミア」での孫正義氏の特別講演をもとに構成されております。設問文等で一部補筆・改変したものがあります。

(大塚常好、小澤啓司、原 英次郎、宮内 健、村上 敬=構成)
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