信号機の「レッド、グリーン、イエロー」

社員に、「適合性」のようなリスクを理解し当事者としての認識を常に持ってもらうために、私たちは、コンプライアンス・リスク・マネージメント・プログラムを展開しています。これには、私が、現場でのリスク管理の実態により適していると考える、冒頭で紹介したものとは違う、もう一つの「車とのたとえ」を使用します。

このプログラムでは、たとえば営業活動の進行を、レッド、グリーン、イエローの「交通信号」に見立てたリスク・プロファイルによって分類します。多くの販売計画はグリーンつまり「進め」で、これらは、低リスク状態で、商品のお客さまへの適合性は、明らかに疑いのないものです。

一方、例えば高齢のお客さまへの投資的な商品の販売というような一部の販売計画はレッドつまり「止まれ」です。販売エラーのリスクは高く、販売を停止し、詳細に調査し、お客さまに適した商品を販売していることを確実にするという厳しい社内規則があり、販売が適したものであるという絶対的な確信がある場合のみ、信号はグリーンとなり、販売を進めることは安全であると判断します。

イエローつまり黄色信号は、皆さんも「スピードを上げて走り抜けろ」と常に解釈しているドライバーに遭遇したことがあるでしょう。でも実際は、イエローはドライバーに「止まったほうが安全ならば止まれ」という判断を委ねているのです。運転中、私たちはこうした判断を、交通規則の知識と、スピード、交差点からの距離、道路状況といったものを見極めて、素早く瞬時に下しています。

交通信号がイエローの時と同様に、保険商品の販売では、状況に応じて、社員が常に注意を払い、販売が適切かどうかを判断することが求められます。たとえば、当社では会社として「適合性の原則」を守る観点から資産、収入等の財産の状況のガイドラインを持っています。但し、お客さまが特定の商品を契約し継続できる金銭的な余裕があるかの判断は現場の社員にしか務まりません。もし、疑わしいことがあれば、社員はコンプライアンス部門にアドバイスを求めます。

同様に、保険会社は保険募集においては、お客さまに必ず説明をしなければならないことが法令等により定められています。保険商品は目に見えない無形の商品であるため、お客さまには保険商品の内容を十分に説明し正しく理解していただく事が重要です。この場合も、お客さまが契約しようとしている内容を本当に理解しているか、あるいは、更なる説明が必要か否かの判断はお客様と接している社員にしかわかりません。

車を運転するように、ビジネス上のリスクマネジメントを効果的にするには個々の社員に頼ることになります。社員がこうしたビジネス上のリスクがどういった場合に起こりやすいか、またどのように管理するかを理解できるようにすることは、社員が当社のビジネスの基盤であるお客さまからの信頼を守ることの助力となります。そのためにも、確固たるモデルの中で継続して取り組んでいく必要があると思っています。

メットライフ生命保険株式会社 代表執行役 会長 社長 最高経営責任者
サシン・N・シャー

1967年生まれ、米国出身。米国スティーブンス・インスティテュート・オブ・テクノロジー卒。99年メットライフ入社。2011年アメリカン・ライフ・インシュアランス・カンパニーリージョナル専務執行役員、12年メットライフアリコ代表執行役専務最高執行責任者などを経て、現職。
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