新卒採用で学歴は関係ない

鈴木さんが入社後すぐに配属されたのは、人事部。新卒採用をするグループに、3年いた。内定を得るまでには、年により違いがあるが、5~6回に及ぶ面接があるようだ。ある年は、1次面接(会社側2人:学生4人)、2次面接(会社側3人:学生1人)、人事面接(人事部員:学生1人)、局長面接、役員面接(最終面接)と進んだ。面接の間に、筆記試験なども行われる。

新卒の採用試験でも、学歴を重視し、採用するか否かを決めていないという。エントリシートには、学歴を書き込む欄がなかったようだ。

筆者の経験をもとに、大手マスコミの新卒時の就職試験の裏側を補足したい。20数年前、新卒時に全国紙やNHKの記者職、キー局のいくつかを受験した。そのうちの1つの報道機関は、記者職へのエントリー者数が約4000人で、内定者は12人と人事部の役職者から聞いた。

当時、マスコミ界のトップ企業だったフジテレビジョンや日本テレビには、この数を上回る学生がエントリーしていたと考えられる。この母集団から、数十人を選ぶとき、「学歴」では採用するか否かの判断材料にならないのかもしれない。

鈴木さんに、このようなことを尋ねると、こう答えた。

「倍率が激しいから、内定を得ることは難しいと当時から思っていたので、大学2年の始めから、マスコミのセミナーに通っていました。慶應よりも難易度の高い大学の学生もいましたが、高学歴の人がキー局から内定を得たというわけではなかったようです。

入社後は、人事部で3年間、新卒の採用試験に関わっていましたから、学歴をもとに採用していないことは、自分の目で実感しています」

新卒時の就職活動のとき、会社からすると、鈴木さんには潜在的な能力を感じさせるものがあったのかもしれない。

慶應大学在学中は、1年から4年まで体育会ラグビー部でトレーナーをしていた。湘南藤沢キャンパス(SFC)と日吉キャンパス(横浜市港北区)を往復する日々だったようだ。練習や試合、合宿などに立ち合うことはもちろん、選手にテーピングをしたり、けがをしたときには病院の選定などをしていた。当時、チームには、現在、サントリーで活躍する金井健雄選手や、パナソニックワイルドナイツの山田章仁選手(U19・U23日本選抜、7人制日本代表)などがいた。