いまから準備を進め、最期は自宅で迎える

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意外と知らない大腸がんの治療費

がんは早期発見、早期治療ができれば、いまや治る時代です。それは2つのがんを早期のうちに治療した私が、身をもって知っています。そして、早期がんの段階で発見するのに何より重要なのが、がん検診を受けることです。がんは自覚症状が出てきたときには進行しており、手遅れというケースも少なくありません。

私ががんセンター中央病院院長だったとき、1年間に院内で亡くなった約400人のがん患者さんのうち、8割の人は発見時の病期が3~4期で、がん検診を受けていませんでした。がん検診の受診率は現在、20%程度に低迷していますが、50%に引き上げると、がん死亡率(年齢調整後)が約4%低下するという国の試算もあります。

早期がんであれば、体にやさしい内視鏡手術や腹腔鏡手術で治療でき、化学療法も受けなくて済みます。治療に伴う合併症や後遺症が少なく、医療費もあまりかかりません。大腸がんの場合、便潜血検査を年1回は行い、陽性だった場合は必ず精密検査も受けましょう。そうすれば、きわめて高い確率で早期がんを発見できます。私はいまでも定期的にがん検診を受けています。大腸がん治療後にも一度、5ミリメートル大の大腸のポリープを2つほど摘出しましたが、良性腫瘍でした。

ところで、私は07年の暮れに、妻をがんで亡くしました。肺がんのなかでも、最も悪性の小細胞がんでした。全身にがんが転移してしまい、最期は妻の強い希望で自宅に一緒に帰り、そこで妻を看取りました。あらゆる治療を試みたあとだったので、妻が家にいたのは4日間。家でゆっくり過ごさせてあげられなかったのが心残りです。

私自身、もし難治のがんで余命いくばくもなくなったら、治療を早めに切り上げ、家に帰ってひっそりと死にたいと願っています。ですから、自分の在宅ケアの準備、遺産や遺品の整理もいまから行っています。

患者さんの6割は自宅で亡くなることを希望しているのですが、実際には8割の人が病院で亡くなっています。在宅医療を行う医療機関は増えていて、そうした医療機関は地域の自治体などに聞けば教えてもらえます。医療機関同士の協力も進んでいて、地域がん診療連携拠点病院などでもわかります。終末期の在宅医療を普及させ、多くの人がわが家で最期を迎えられるようにしたいですね。

日本対がん協会 会長 垣添忠生
1941年生まれ。67年東京大学医学部卒業。同大医学部附属病院、都立豊島病院などを経て、75年から国立がんセンター泌尿器科に勤務。病院長を経て2002年に総長に就任。現在、日本対がん協会会長として、がん検診の受診率アップなどに積極的に取り組んでいる。
(野澤正毅=構成 加々美義人=撮影)
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