分子標的薬は高額なのが問題点
内視鏡手術に適さないがんは、外科手術で病巣のある部位ごと切除します。がんが進んでいれば、まわりのリンパ節も広範囲に切除します。開腹手術が主流ですが、進行がんでなければ、腹腔鏡手術も選べます。腹腔鏡手術は、腹部に小さな穴を数カ所開けて腹腔鏡と手術器具を入れ、腹腔鏡を見ながら、患部を切除して穴から取り出すという治療法。開腹手術に比べて体への負担が少なく、いまでは治療成績でも遜色ないといわれます。
進行がんでは、外科手術だけでなく、抗がん剤を使った化学療法も行われます。複数の抗がん剤を組み合わせたFOLFOX療法、FOLFIRI療法、XELOX療法に加え、最近では「ベバシズマブ」や「セツキシマブ」といった、がん細胞の特定の分子を狙い撃つ分子標的薬も使われ、約6カ月だった生存期間が約24カ月に延びました。しかし「延命」ができるだけで、分子標的薬が大変高額なのも問題です。
ですから進行がんの場合、治療にどんな効果があるのか、体への負担や副作用はどうなのか、医療費はどのくらいかかるのかといったことも、主治医に確認しましょう。そのうえで家族や主治医とよく相談して、自分のニーズに合わせた治療計画を立てたほうがいいでしょう。たとえば、「延命効果が限られているなら、化学療法による副作用や経済的負担は避けたい」と考えた場合、化学療法は受けずに、緩和ケアを受けながら充実した余命を全うするのも一つの選択肢です。
そして2度目のがんが見つかったのは2005年、がんセンター総長のとき。研究的ながん検診に参加したのですが、担当医と一緒に腹部超音波検査の画像を見ていると、左の腎臓に影がある。私は泌尿器がんが専門なので、すぐにがんだと気づきました。まだ1センチメートル大で転移もなく、がんセンターに1週間入院、開腹手術による腎臓の部分切除で済みました。術後の経過観察もしていません。