失敗したかな、と最初は思っていた

孫正義氏

それまで、ソフトバンクというブランドネームで一般消費者にダイレクトにモノを売ったことがありませんでした。創業時はソフトの卸売業でB2Bでしたから、一般消費者は顧客ではなかった。また、ブロードバンド事業の「ヤフーBB」も、ヤフーのブランドを使いました。しかし、いよいよモバイル事業を視野に入れたとき、「ソフトバンク」で勝負しようと決意したのです。ユニホームの胸には大きく、ソフトバンクの名が入り、袖には黄色い2本線。これは、僕が敬愛する坂本龍馬率いる海援隊の旗をもとにしたもの。

「ソフトバンクホークスは世界一の球団を目指します」。僕は本気でそんなスローガンを掲げました。

とはいえ、ホークスを買収して3年間ぐらいは、「失敗したかな、買わなきゃよかったかもしれない」というのが正直な気持ちでした。ある程度覚悟していましたが、球団経営の年間赤字は20億~30億円。何せ、毎年のことですから負担が軽いとは言えません。それでも、携帯電話事業に参入し、全国に大勢のユーザーがいる今、みんなに愛される球団を手放そうなどという気持ちは少しもありません。昨年、ペナントレースで優勝したときも社員一丸となって応援しました。ホークスはなくてはならない存在なのです。

一橋大院教授・インテグラル株式会社代表取締役 佐山展生氏が解説

佐山展生氏

オリックスの宮内義彦CEO、楽天の三木谷浩史社長など、成功の証しとして野球チームを持つことに経営者は喜びを感じるようだ。アメリカでも投資案件とは考えずに大金持ちが球団を持つケースは多い。ただし日本のプロ野球の場合、大リーグやJリーグと違って企業名入りの「福岡ソフトバンクホークス」という名前が、マスメディアに連日登場するので、球団経営での赤字は、広告宣伝費と考えることができる。

●正解【B】――「ソフトバンク」ブランドを国民に愛されるプロ野球で浸透させる

※本記事は2010年9月29日に開催された「ソフトバンクアカデミア」での孫正義氏の特別講演をもとに構成されております。設問文等で一部補筆・改変したものがあります。

(大塚常好、小澤啓司、原 英次郎、宮内 健、村上 敬=構成 青沼 修=撮影)
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