6.たった一度の失敗でへこたれていないか
門弟に向けた『留魂録』には、死後に実行すべき事柄が書かれています。多くは、あそこの藩に憂国の士がいるから会えという内容。松陰は人のつながりを重視していました。
豈に勇士の事ならんや。
この言葉も「天下の事は天下の有志の士と志を通じなければ達成できない」という意味です。松陰は、人のネットワークの力で攘夷を成し遂げようとしました。人の協力が大事であるのは、いまも同じ。素直に人の力を借りることが大事です。
もちろん人の力を借りたからといって、うまくいく保証はありません。大きなことに挑戦すれば、むしろ失敗することのほうが多いはずです。しかし松陰はこう言っています。
「一敗乃ち挫折する。豈に勇士の事ならんや」
1度失敗しただけで挫折するような人は、勇気のある人ではないというのです。実際、松陰は2度も牢に入れられつつ、尊王攘夷の実現を諦めなかった。まさしく不屈の人です。
松陰は辞世の句に、「二十一回猛子」という号を用いました。当時の人はさまざまな節目で、新たに生まれ変わるという思いを込めて改名しました。二十一回猛子は、21回狂ったことをして生まれ変わるという意味。深読みすると、「20回失敗するが、そのたびに立ち上がればいい」という意味にも取れます。松陰は号を通しても、失敗を恐れない心を教えてくれているのです。
※言葉の出典は『吉田松陰 留魂録』(古川 薫・全訳注)
リーダーシップ・行動心理学研究者、オープンプラットフォーム主宰
世界NO.1コーチと呼ばれるアンソニー・ロビンズに師事。起業家・経営者・ビジネスリーダー向けのスクールを主宰。翻訳の正確性よりも松陰の志を伝えた著書『覚悟の磨き方 超訳吉田松陰』が20万部超えの大ヒット。