一方のUSJは、12年時点で、そこからの10年間に、新たなテーマパークやアトラクションを導入した場合を想定し、10年間トータルの経済波及効果を試算した。その結果、USJが新しいテーマパークやアトラクションを導入した場合の近畿地方における経済波及効果は約3兆1400億円、全国における全経済波及効果は、実に約5兆6200億円にのぼった。

この巨額の試算について、ユー・エス・ジェイ執行役員の森岡毅氏はこう言う。

「テーマパークというのは街みたいなもの。街には物販業者も飲食店員も、イベントプランナーもエンターテイナーも、企画や経理、管理の人もいる。多くの雇用を生み出しているところが大きいですよね。それと、5兆6000億円というのは、GDPにもなんらかの影響があるくらいの金額です。テーマパークという業態が、経済効果の異様に高い業態だということをこの試算で教えていただいた気がします」

森岡氏は、この経済効果の規模の大きさを知り、さらに筋肉質の攻める経営が必要だと言う。

「USJの持つ、世界で最も効率的に大型集客施設を運営するノウハウの輸出など、まだまだ構想は尽きませんが、日本を元気にするため、アジアのリーディングカンパニーへの階段をのぼるためにも、先を見据えながら大阪への投資を大事にしていきたい。今は、ハリー・ポッターファンをUSJファンにいかに変えるか。そのためにイベントのクオリティーも昨年より上げているし、『進撃の巨人』『エヴァンゲリオン』『モンスターハンター』と『バイオハザード』と、日本が誇る4つのブランドが一堂に会するクールジャパンのイベント等も計画しています」

ハリー・ポッターの成功に甘えず、森岡氏はすでに次の手を打ち続ける。

関空も、今後へ向けたポテンシャルが残されていると、新関西国際空港の安藤圭一社長兼CEOは言う。

「関空は現状の1.5倍ほどの発着枠を残していますし、第3ターミナルビルを完成させた後も150ヘクタールの未使用地も持っている。まだまだ、すごいポテンシャルがあるんです」

国内の遠隔地や海外から客を呼び込み、消費に結びつけることが、大阪経済の浮揚につながり、その時点で、ホテルや交通網のさらなる整備拡大も見込める。従来型の企業誘致による人口集積なくしても、多大な経済効果をもたらすことは不可能ではないのだ。

問題は、いかにして人を引き付けるだけの新たな魅力をつくり続けられるかだ。そういう意味で、大阪の勝負はこれからが本番。観光立国への先鞭をつけられるか、期待が集まる。

ユー・エス・ジェイ CMO 森岡毅
昭和47年生まれ。神戸大学経営学部卒。平成8年、P&G入社。北米パンテーンのブランドマネージャー、ウエラジャパン副代表などを経て、平成22年ユー・エス・ジェイ入社。24年より現職。
 
新関西国際空港 社長兼CEO 安藤圭一
昭和26年生まれ、東京大学経済学部卒。昭和51年現三井住友銀行に入行、代表取締役兼副頭取執行役員などを歴任。平成24年4月新関西国際空港株式会社代表取締役社長に就任、7月より現職。
(水野浩志=撮影 AFLO、PIXTA=写真)
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