海外現地法人トップと英語の経営会議
私は入社以来、保険金支払いから、労働組合の専従、投資部門を経験。さらに縁あって、30代後半からの4年間をアジア開発銀行で過ごさせてもらった。そこでの「公用語」は英語で、非常に苦労したことに加え、それまでの知識や経験に頼るわけにはいかなかった点でも大変な思いをした記憶がある。仲間との議論ひとつ取っても、正しい情報による論理立った主張ができないと相手にされない。
先日、シンガポールやトルコの海外現地法人のトップを招き、日本の経営陣とともに海外事業展開をテーマに経営会議を開催したが、私には彼らが遠慮しているように見えた。終了後にそれを尋ねたところ「日本人は公の場で意見を戦わせないという文化があるから強い主張は控えるようにした」という。
もし、開催地が日本以外の国だったならば、彼らもはっきり意見を口にし、自分がめざす結論へとより積極的に議論を導いただろう。日本人がグローバルに活躍しようとするなら、この姿勢は素直に学ぶべきだろう。そして、相手の発言の背景を斟酌しながらも、率直に主張を述べ、好意と尊敬を得られるようなセンスを磨くこともグローバル人材の重要な要件といっていい。
いまSOMPOホールディングスには約3万の日本人の社員がいるが、このうち海外での勤務を経験している社員はわずかでしかない。当グループはM&Aなどを通じて海外進出を進めており、これまでも異動・配置や研修を通じて積極的な人材育成を図ってきた。ただし、グローバルマーケットで戦える人材がグループ内に十分にいるかとなると、まだ心許ない。これからはグループ内外のさまざまな実践的機会をより多く提供することで、グローバル人材の育成を加速させていきたいと考えている。
1956年、東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業後、安田火災海上保険入社。2010年に損害保険ジャパン社長に就任、2014年9月より損保ジャパン日本興亜会長。12年より日本興亜損保との持ち株会社NKSJホールディングス(現・損保ジャパン日本興亜ホールディングス)社長を兼任。