ディズニーシー開園は危険な賭けだった
顧客の潜在的ニーズについて仮説を立てたら、それにもとづいてつくった商品やサービスを、勇気を持って提供することも大切です。たとえ仮説の精度が上がっても、仮説が外れるリスクはつねに存在します。しかしそれを恐れていたら、いつまでも仮説を検証することはできません。外れるリスクを受け止めたうえで、勇気を持って実行に移す。その姿勢が必要です。
その点でいうと、ディズニーシーの建設に踏み切ったディズニーの決断は秀逸でした。東京ディズニーランドには、米国のディズニーランドというお手本がありました。「ビックサンダーマウンテン」や「スプラッシュマウンテン」といったアトラクションも、アメリカで実績があり、安心して導入することができました。
しかし、「海」をコンセプトにしたテーマパークは、世界のディズニーで初めて。まさに未知なるものであり、ディズニーファンに受け入れられるかどうか、確実なことは誰にも言えませんでした。しかも、シーの建設にはとてつもない投資が必要です。仮説が外れて顧客にそっぽを向かれれば、会社が傾きかねません。それでもディズニーは、リスクを取ってシーの建設を決断しました。その結果がどうなったのか、あらためて言うまでもないでしょう。
未知なるものを新しく作り出そうとすれば、必ずリスクは伴います。逆に言えば、リスクを取らない会社に新しいものは生み出せないし、新しいものを生み出せない会社が感動を引き起こすこともできません。そのことを胸に刻んで、一歩前に踏み出してほしいと思います。
「未知のものが感動を呼ぶといっても、1回出会って感動してしまったらもう未知のものではなくなるのだから、すぐに飽きられるのではないか」と疑問を抱く人もいるでしょう。たしかに最初は新鮮な商品やサービスも、2度目、3度目と経験するうちにインパクトは薄れてきます。人間の心理を考えれば、やがて飽きを感じるのは仕方のないことです。