日本は再生可能エネルギーを育てられるか

それを防ぐためには、時々刻々と変化する需要に合わせて瞬時に供給をしていくことが必要になる。そのために各電力会社では最大電力需要に対して、供給が可能な発電能力を予備として持つ。この供給予備率は最低3%とされているが、これで必ずしも十分というわけではない。再エネ普及が進んでいるスペインなどでは20%を超える予備率があるという。

一般的に供給予備率が高いほうが再エネ発電は受け入れられやすい。それだけ発電出力の不安定さをカバーできるからである。だが、それでもベースロード電源の供給力と再エネからの発電による合計が需要を上回る余剰電力の発生というリスクがつきまとうことを念頭に置かなければならない。その場合は、リチウムイオン電池などの蓄電池を活用して電気を貯めておく対策が考えられるが、電気を大量に蓄えるには、今の技術では高価な蓄電池が多数必要となり、設置にあたっても空間的な大きさが増加し、高額なコストを余儀なくされてしまう。

「さらに、太陽光あるいは風力発電の導入に関しては、この送変電設備の増強という問題も抱えることになります。なぜなら、メガソーラーも含め、これらの発電ユニットは地価が安いとか、1年を通じて風が強いといった地域に集中しています。太陽光なら九州、風力は北海道や東北といった具合です。これによって極端な地域偏在が生じているのです。これらの場所は、人口過疎で、電力需要も少ない地域ということになります。ここには大容量の送電線や変電設備はありませんから、過去の国による試算で7兆~21兆円をかけて送電網を整備していく必要があるわけです」(朝野氏)

いま、電力会社間での電力融通、つまり余った再エネを隣の会社に送電する実証実験も進められている。だが、これを行う電力会社の負担は相当なものになる。送電線建設には様々な工程があり、ルート選定に着手した後、数年から10年といった長い施工期間がかかるケースが大半だ。そうした設備投資費用は最終的には国民負担になっていく。このように乗り越えるべき課題は山積している。

いずれにしても再エネは石炭や天然ガス、原子力と比べて割高といわざるをえない。そこで自立した電源に育つまで、国民が賦課金を出して買い支えるのが、再生可能エネルギー電力の固定価格買い取り制度(FIT)の目的である。最近の大混乱はあたかも再エネが悪者であるかのような印象を社会に与えてしまった。それを断ち切る意味でも、買取制度の見直しは不可欠だ。将来のエネルギー政策を考えても、再生エネルギーは欠かすことができない。資源を持たない日本において、再生可能エネルギーをどう育てていけるか、その岐路に立たされている。

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