再生エネルギーの活用のなかでも特に注目されているのが太陽光発電だ。しかし、固定価格買い取り制度があだとなって、一部の発電事業計画が利権化してしまっている。バブル状態になった現状と、その解消に向けた取り組みを追う。

売電まで秒読み段階に入った茨城県内の太陽光発電プラント。

「夕日に映える太陽光パネルは本当に美しい。このパネルが20年間、約150世帯が消費する電力量をまかなってくれる。そうと思うと、愛おしくすら感じる。福島第一原子力発電所の事故を契機に、再生可能エネルギーの活用が進められているが、一時のブームに終わらせることがあってはならない」

茨城県内にある500キロワット規模の太陽光発電所の建設現場で、こう語るのは日本メガソーラー整備事業社長の目崎雅昭だ。同社はこの発電所の設計から資材の調達、施工までを一括して請け負うEPC業者。しかも、2012年10月に設立したばかりのベンチャー企業である。

実は、目崎は慶應義塾大学卒業後、米国留学を経てメリルリンチ証券に入社し、金融派生商品のトレーダーとして世界一の収益をあげた経歴を持つ。そして、同証券退社後は世界100カ国以上を訪問し、「人間にとっての幸福とは何か」を追究してきた、つい先ごろまでは太陽光発電とは無縁の“異色の人物”なのだ。

この世界に目崎が足を踏み入れるきっかけになったのは、太陽光発電の事業性に注目していた友人との出会いと、北海道で土木建設事業を営む妻の実家の遊休地の再利用の話が重なったこと。「12年8月から、その土地でまず50キロワット規模の実験プラントをつくってみることにした」と目崎はいう。

前月の7月からは再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)がスタート。1年目の12年度は太陽光の場合、1キロワット当たり42円(税込み)で20年間、電力会社が買い取ってくれるので、発電事業者も長期間の収支が見通せて参入しやすくなった。しかし、地元のゼネコン業者から出てきた、太陽光パネル、架台、付随する工事費などを含めた発電システム関係の見積書を見た目崎は、思わず自分の目を疑った。

そこに記載されていたのは2500万円近い金額。1キロワット当たり約50万円の計算になるが、買い取り価格の算定基準となった発電システム関係のコストは同32万5000円である。「いくら素人相手にしても、あまりにも法外な値段だ。でも、相手はそれが当然という姿勢で、次第に太陽光発電の事業のあり方に疑問を覚えるようになった」と目崎はいう。