この太陽光発電で先行したのがドイツで、00年からFITを導入している。10年時点でのドイツにおける1000キロワット規模の太陽光発電所の建設コストは日本の水準を45%も下回る(図1参照)。それに日本の買い取り価格自体が高い。その買い取り価格が決まった時期のドイツのそれは13.5ユーロセント。日本円に換算すると14.9円で、日本より6割以上も安い水準だった。
買い取り価格は発電事業全体のコストダウンの状況を見ながら、毎年引き下げの方向で見直しが図られる。しかし、コストダウンに勢いをつけていかないと、われわれの家計に重い負担として跳ね返ってくる。電力会社が買い取るといっても、そこで支払った費用は、「賦課金」という形で電気の使用者に対し、その使用量に応じて請求が回ってくるからだ。経済産業省は毎月300キロワット時の電気を使用する標準家庭であると、FITスタート当初は賦課金が66円上乗せされ、20年時点ではその額が同276円にアップするものと試算している。
それでなくても、原発の停止で火力発電への依存度が高まって電力料金の引き上げが相次いでいる。高いFIT価格のまま太陽光発電が増えれば、そこに賦課金がさらに重くのしかかってくる。そうなると電気使用者の反発が強まって、せっかくの再生可能エネルギーの利用にブレーキがかかり始めるかもしれない。
危機感を募らせた目崎は、実験プラントを自ら建設することでメガソーラー事業の世界に分け入り、適正利益を得ながら継続性を確立する方法を模索していくことを決意。いまでは設計や建設関係のエキスパートを含め30人のスタッフが集い、道内と北関東で9つのプロジェクトに携わってきた。今年からは30メガワット規模のメガソーラー(大規模太陽光発電)のEPC事業を本格化させていく。
彼らの名刺には“持続可能性のある社会をつくるために電力料金と同じコストを実現する”という意味の「Grid Parity for Sustainable Society」のキャッチが掲げられている。その目標達成への取り組みを通して、メガソーラー事業の現状を検証していくことにしよう。