心配なのは東京オリンピックの2020年以後

【塩田】わかりました。その姿勢は重要です。一方、長期的に日本の政治をどうするか、20年先、30年先を展望しながら、ビジョンを立て、設計するという点については……。

【細野】今後も何度か危機がくると思うんです。財政的な危機もくるでしょう。私が一番、心配なのは、東京オリンピック開催の2020年の後ですね。リスクはあっても、20年まではこのままうまくいろいろな危機も乗り越えられるのかもしれません。問題はその後です。

日本は文化も伝統もしっかりしています。文化的に成熟しているし、いろいろなものを受け入れる力もあるから、長い目で見ると、悲観していません。大丈夫だと思います。

ただ2010年から40年くらいまでの30年間、少子高齢化と人口減少は相当大変です。ここを乗り越えられれば、もう一度安心できる国になると思いますが、激変の30年間をどう乗り越えるかは並大抵なことではありません。その中で、国家的な破綻とか国際的な孤立に陥らないようにやっていくのは本当に難しいと思います。私はそこに自分の役割を見ています。

【塩田】いつ、どういう動機から政治家の道を目指したのですか。

【細野】昔から机に向かって勉強するのが苦手でした。もともと人との関わりとか、人と接するとか、何かに関わることで少しでも状況がよくなるとか、人が喜んでくれるとか、そういうことが好きでした。そんな仕事ができないかなという気持ちがありました。

1993年の総選挙で当選した若手議員が国会で活動をするようになったのを見て、自分にもできるのでは、と思いました。政治の世界でやってみたいという思いと、もしかしてやれるかもしれないという思いが同時に生まれました。それから2年後、大学生最後の年に阪神・淡路大震災があり、2カ月ほど神戸でボランティアをしました。そこで政治や行政の役割って本当に大きいなと思い、それで最終的に腹が決まりました。

【塩田】国民にとって、政治はどんな役割を果たすべきだと考えていますか。

【細野】国民がちゃんと食べられる、生活できるようにすることです。必ずしも経済的にどんどん豊かになるという意味ではありません。みんなが安定して生活できるということです。目立たないけど、それを着実にやっている政治が一番いいと思います。

【塩田】政治リーダーはどんな条件を備えていなければならないと思いますか。

【細野】精神的、体力的に強いことは、最低限の条件だと思います。平時はいいのですが、いつ何があるかわからないから、それがない人にリーダーは無理だと思います。

もう一つ、公に生きられるかどうかですね。逆にいえば、私(わたくし)を棄てられるかどうかです。官だけではなく、民間も含めて、公に生きる人たちを大事にして、彼らと連携をして国民を幸せにできるかどうか。政治の一番大事なところだと思います。

細野豪志(ほその・ごうし)
民主党・元幹事長
1971(昭和46)年8月、京都府綾部市生まれ(43歳)。滋賀県近江八幡市で育ち、県立彦根東高校、京都大学法学部卒。三和総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)研究員を経て、2000年の総選挙に民主党公認で出馬し、28歳で初当選。以後、連続当選(現在、当選5回)。民主党幹事長代理、首相補佐官、特命担当相(消費者及び食品安全担当・原発事故担当)、環境相、民主党政調会長、幹事長などを歴任。尊敬する人物は江戸時代末期に備中松山藩(現岡山県高梁市)で藩政改革を行った漢学者の山田方谷だという。「国民と対話する姿勢、権力にこだわらない生き方。そこが好き」と。楽しみは落語で、「噺家の生き方が出る。古典の世界の知恵がある」と話している。
(尾崎三朗=撮影)
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