日本にいつ来る、どうする、どうなる

ですが、熱帯雨林に手をつけるのは危険をともないます。凶悪なウイルスが眠っている可能性がある。「(ウイルスを媒介する)コウモリと接触する機会が増えすぎたのではないか」「その原因は何か」そういう発想が必要だと思います。つまり、個々のウイルスへの対処とは別に、地球の生態系をひとつの生き物としてとらえる視点です。

日本では99年に感染症法ができ、エボラは各県の感染症指定医療機関で対応すると定められました。日本で経験したことのない病気について、指定医療機関の医師の研修に協力してほしいと厚労省から2007年、国立国際医療研究センターに依頼がきました。海外での研修を企画してほしいというものでした。そこで年一回の海外研修を始めました。

また、各県の指定医療機関で患者が発生したときの治療法や感染症対策のガイドラインがなかったので、それを作成してほしいという依頼が11年にありました。それもお引き受けし、6人のチームで3年かけて診療の手引きをつくりました。近々ホームページに載せたいと考えています。

日本の場合、西アフリカと人的な強いつながりがありませんからエボラが直接入ってくる可能性は高くないと思います。先日、私が診察した患者はリベリアから帰国後、高熱が出たという人でしたが、診断結果はマラリアでした。可能性が高いのはマラリアです。診察する場合はまずマラリアかどうかを確認し、それでも判断がつかないまま症状が悪化するようであれば国立感染症研究所に相談していただきます。エボラは米国での状況次第でしょう。米国の事例はよくも悪くも世界に大きな影響を与えます。もし日本に入ってきたら現行の法律で定める「各都道府県での対応」は現実的には困難もあります。エボラかどうかがわからないまま時間がたってしまうことがないよう、検査も含めて私ども国立国際医療研究センターや国立感染症研究所が直接相談できるシステムを構築しています。

対応策は99年からつくりあげてきました。その仕組みもさらに改善しています。万が一、日本にエボラが入ってきても感染の拡がりを防ぐべく、万全の準備をしていく必要があります。

(野中大樹=構成 原 貴彦=撮影 時事通信フォト=写真)
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